2011年8月27日土曜日

野球のセオリーの錯覚

 「四球で出塁させるなら、ヒットの方がましですね。試合の流れが悪くなる」というフレーズを野球解説者はよく使います。

根拠があることなのだろうか。行動経済学が専門の名古屋大学大学院・加藤英明教授は、神戸大学大学院潤准教授の山崎尚志氏とともに、05年度のセ・パ公式戦(交流戦を含む)846試合、15143回を分析しました。同年の全イニングの得点(失点)確率26.4%、得点(失点)平均0.495点と比較しながら、解説者のいう「セオリー」を検証しました。

「先頭打者を安打ではなく四球で出すと、試合の流れが悪くなる」

加藤教授のデータ通りに動く球団をX球団とする。X 球団が先頭打者に安打を打たれた場合、四球を出した場合、それぞれの失点確率は安打40.5%、四球39.0%。失点平均は安打0.832、四球0.833。安打の方が失点確率は高いのです。

X球団のその裏の攻撃。四球を出すことで流れが変わるなら、攻撃のリズムも狂う。だが安打を打たれた場合の得点確率は25.4%、四球の場合は27.2%。得点平均は安打0.454、四球0.540。四球で先頭打者を出した場合の方が、裏の回で得点する確率は高いのです。

 「2アウトから出塁されると流れが悪くなる」

これが正しければ、三者凡退で打ち取った次の回は、そうでなかったケースよりも得点確率は高いはずです。

しかし、X球団がB回表を三者凡退で抑えた場合、B回裏の得点の確率は26.2%、得点平均は0.492点。X球団がB回表二死から走者を出して得点された場合、B 回裏の得点確率は28.1%、得点平均0.580点。全イニングの平均値と比べると、三者凡退で打ち取っても平均値以上に得点確率は上がらず、走者を出しても得点確率は下がりませんでした。

同様に「エラーをすると流れが悪くなる」「ホームランは流れを変える」などを調べたが、そのような結果は出なかった。

「過去に起こった回数によりも、印象の強さが、ゲームの流れといわれているのではないでしょうか」と話します。

 「ラッキー7」と言われるが、加藤氏が得点確率と得点平均を調べると6回表、裏が最も高くなっています。先発投手の球威が落ちても勝ちパターンの投手交代には早い。6回は監督の采配が問われるイニングでもあるということになるようです。

0 件のコメント: