「もはや伝統的なケインズ政策は効かなくなった。欧米経済もこれからの日本と同じ道をたどる可能性が高い」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏は、語っています。
これは、産業革命以来、西洋資本主義が成長の源としてきた「世界のフロンテイア」が消滅したからです。戦後の覇権国アメリカは、グローバル資本が自由に国境を越えて流通することが可能な「金融空間」という新たなフロンティアを創り出すことに成功しました。このような「金融空間」の創造によって、アメリカは世界の資本を呼び寄せ、成長経済を維持することに成功しました。
しかし、アメリカに富をもたらして来た「金融空間」もリーマン・ショックで崩壊しました。その結果、いまや、先進国にとっての「成長のためのフロンティア」は消滅したことになります。これが、先進国低迷の根本的原因です。
世界の金融市場は激震を続ける中で、日本は超円高に見舞われています。円の対ドル・レートは、第二次大戦後の国際金融秩序を定めたブレトンウッズ協定以来、360円から76円台へと、実に4・7倍にもなりました。
日本のような巨額の国家債務を持つ国の通貨でも、ユーロやドルよりも信用できるということになっているわけです。日本が「債権国」であるという単純な事実の反映でもあります。
中谷氏は、「円高は当分続くと見なければなるまい。超円高に直面して日本は何をすべきなのか。
第1は、円高を悲観するのではなく、これを積極的に活用する発想を持つことだ。欧米経済の深刻な状況を考えれば、多少の為替介入や日銀の量的緩和政策で為替レートを円安に戻すことなど、ほとんど不可能に近い。円高をとことん活用するという考えに転換すべきであろう。
日本の経営者もそろそろ本格的にグローバル経営に乗り出す腹を固めるべきときが来たのだと思う。
第2は、高齢化社会先進国である日本は、医療・介護・福祉・教育・文化・などの分野で最先端の商品・サービスを開発するという発想を持つことだ。
従来、自動車・家電など若者向け輸出商品の開発に集中してきた。日本企業の経営努力を、高齢者向けの商品・サービスの開発に振り向けのである。これによって、世界に先駆けて日本が高齢化社会の先端産業モデルを創りあげ、それを日本の競争力の中核に据えるのである。
第3に、すでに多くの識者が強調しているところであるが、環境技術や再生エネルギー技術に磨きをかけ、日本が世界になくてはならない国になることだ。
いずれも、決して日本人にできないことではないと思う」と結論づけています。
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