日経では、「今回の事故を起こした東電は安全面の対応に問題があった。しかし、どんな策も事故の可能性をゼロにできるわけではない。原発で事故が起きれば賠償額が民間企業だけでは負いきれないほど大きくなることを、今回の事故は示している」と書いています。
日本の原発事業は、国が推進政策を打ち出し、それを株式を上場している民間企業が遂行するという構図になっています。現在の株式市場は欧米投資家の影響力が強まっており、東電の株主も2割近くは外国人が占めます。国際的に見て電力会社が無限の賠償責任を負うのは、日本やドイツ、スイスなど少数にとどまります。
地震や津波が「異常に巨大」かどうかの判定しだいで電力会社への影響は、「全か無か」に分かれますが、判定の基準などはっきりしていません。福島第1原発の放射能漏れ事故で、損害賠償の範囲を検討している文部科学省の「原子力損害賠償紛争審査会」が6月20日、「精神的損害」の慰謝料を決定しました。
自宅を離れて避難生活を余儀なくされた住民に対して、年齢や世帯構成にかかわらず、事故発生から6ヶ月間は1人当たり月額10万円。体育館や公民館などの避難所で生活した期間は、精神的苦痛より大きいとして2万円を加算し、月額12万円。屋内退避を指示された地域の住民については、指示が出ていた約40日間の慰謝料を1人あたり10万円と決めました。
この金額は、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の慰謝料(月額換算12万6000円)を参考に算定したといいます。自動車事故と、いつ自宅に帰れるかも分からない放射能漏れ事故を同じ基準で考えるのは、あまりにナンセンスではないかと、日刊ゲンダイは指摘しています。
避難生活を余儀なくされた被害者からは、「子供だましだ」と怒りの声が上がっていますが、損害賠償は秋ごろから受付を開始するという遅さです。支払いは、当然のことながら、さらに先になります。文部省の関係者は「月額10万円でも、頑張った方です」と、言っています。
「原子力損害賠償法では、事業者である東電が全責任を負うことになっていますが、精神的損害や風評被害も賠償の対象になり、賠償額はどこまで膨らむか分かりません。清水正孝社長ら東電の役員19人の報酬総額は、約7億円。単純計算で1人あたり約3700万円、1日あたり10万円以上の計算になります。「“加害者”がこの高待遇なのに、原発事故の被害者の精神的損害が1日あたり約3300円では、話にならない」と日刊ゲンダイは憤慨しています。
0 件のコメント:
コメントを投稿