2011年7月10日日曜日

東京電力の工程表(2)

 経産省幹部の話によると、吉田所長は、免震重要棟で強い不満をぶちまけていたといいます。

「報道では、『工程表』作成作業を詰めているというが、私はまったく見せてもらっていない!」と起こっています。これを聞いた同幹部が呆然としました。信じがたい事実だったのです。

『工程表』とは、第一原発の最前線で決死の思いで働く吉田所長の部下たちと、彼が仕切る協力企業チーム―――つまり現場が行う作業を記した文書です。当然、「工程表」を作るのならば、現場の意見を聞き、相談し、協議するのは当然です。現場からの意見が、まず東京電力本社に具申され、それを叩き台にして「工程表」が作られるべきものであるはずなのです。

吉田所長は、さらに衝撃的な事実も、部下たちに吐露していたといいます。

「本店(東京電力本社)から『工程表』を受け取ったのは、発表の前日。それも、せっついてやっとだ!」

吉田所長の不満は、それだけに留まりませんでした。「『工程表』では、『アレバ』に頼んで、汚染水処理施設を第一原発に作ろうということだが、『工程表』を見るまで知らなかった。どこにどう作るのかも、事前の協議がまったくなされていない!」

アレバは、フランス最大手の原子力企業です。4月上旬に東電と契約し、事故収束の支援を行う予定になっています。

アレバが提案したのは、「凝集沈殿法」という技術で、汚染水にフェロシアン化ニッケルなどの吸着剤を入れ、放射性セシウムなど放射性物質を吸着させた上で、凝集剤を入れて沈殿させて取り除くという方法です。

吉田所長の不満からうかがえるのは、『工程表』は東京電力本社が、免震重要棟に強引に押し付けた、という構図です。

発表された『工程表』に、果たして実質的な意味があるのだろうか、という大きな疑念さえ残ります。

菅直人首相に報告する立場の東京電力本社と、実際に作業を行う免震重要棟との間で、まったく意思の疎通ができていないのではないでしょうか。

『工程表』は、本当に、実質的な意味があるものなでしょうか。

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