2009年12月24日木曜日

司馬遼太郎の“ウォール街”(2)

 昨日からの続きです。
 「資本主義というのは、モノを作ってそれをカネにするための制度であるのに、農業と高度技術産業はべつとして、モノをしだいにつくらなくなっているアメリカが、カネという数理化されたものだけで、将来、それだけで儲けてゆくことになると、どうなるのだろう。亡びるのではないか、という不安がつきまとった」と書いています。この考えは、わたしも以前から持っていましたが、ハードからソフトへが、世の流れとばかりに流されて来ました。しかし、資本主義である限りは、先に司馬氏が述べたことが基本の基本でしょう。基本から離れたものが、少しある分にはいいのでしょうが、それがすべてになってくるとどうなるのでしょう。そういう社会は、天才みたいな人が数人いて、コンピュータの前に座って、キーを叩いているとすむような気がします。
 また、司馬氏は、「19世紀末から世界通貨がポンドからドルにかわり、アメリカの産業力が圧倒的に凌駕した。そのドルを裏打ちしている産業がもし衰えれば、金融や相場という、考えようによっては資本主義の高度に数理化された部分は、どうなるのか、素人の不安はとりとめもなくひろがるのである」と書いています。今のアメリカ式資本主義の行き詰まりを見事に看破していると言えます。
 昨年の秋の経済ショックは、まさに錬金術が起こした経済不況、経済危機でした。こういう怪しい話になると、竹中平蔵氏の顔が浮かびます。たしか、慶応大学で教授として教えているはずですが、大丈夫でしょうか。かれは、日本の経済システムをアメリカ式に変え、アメリカの数式にすぐに当て嵌めることが出来るように変えました。これらのアメリカの経済学者の数式に入れるには、同じレベルのデータのとり方をしなければなりません。アメリカの投機家のためには、半年ごとの決算指標よりは、四半期ごとの決算指標の方が精度がよくなり、リスクが少なくなるのです。完全にウォール街のバクチシステムに嵌められたようです。
 今、世界は、多巨頭制に移りつつあり、すでに国際通貨はドルとユーロがあり、おそらく10年以内には、中国の人民元がこれに加わっているでしょう。アジア、アフリカでは、ドル、ユーロよりも信頼性の高い通貨になっている可能性があります。そして、中国はアメリカと違って物を作っています。
 わたしたちは、経済の時間に100円の物を作り、これを100円より高く売れば、これが利益になり、会社が回り、国が回り、資本主義が回るのだと教わりました。本来、ウォール街は、資本家が資本を調達するところであったはずですが、いつしか大きく目的を変えているように思われます。日本式資本主義でもいい。きちんと足元から見直して、後世の人たちが、安心して生活が営まれるようにしておかねばならないでしょう。投機は、全体の10パーセント以下で、投資が90パーセント以上でなければ、危なっかしくて歩けません。

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