2008年11月2日日曜日

鳥の目、虫の目

ものの見方には、「鳥の目」と「虫の目」があり、「鳥の目」を養うには、司馬遼太郎の小説が、「虫の目」を養うには山本周五郎の小説を読むのがいいそうです。産経コラムの石井英夫氏は、物を書くときにこの二つの見方を大事にするそうです。鳥の目とは、文字どおり、空を飛ぶ鳥の視線で地上の風景を見るというものです。すなわち、鳥瞰です。一方、

 虫の目とは、地べたを這いまわる虫の目で、世の中の事象をつぶさに観るというものです。あえていえば、虫験といっています。

 司馬氏の名作の「坂の上の雲」、「空海の風景」、「竜馬がゆく」などもまさに鳥の目で書いているといえます。中国の見方も、常に万里の長城の外側にいる少数民族の目で、長城の内側にいる北京を見ている、これが、司馬史観だというわけです、

 一方、山本周五郎の特色は、「樅ノ木は残った」のような長編よりは、短編により特色が出ているといいます。市井の庶民や社会の吹きだまりで暮らす人たちの哀歓を暖かい目で見つめています。かれのペンネームは近所の質屋の主人の名前を借りたそうです。家もゴルフもクルマとも無縁でした。

石井氏は、鳥の目と虫の目では、天と地ほどに違うが、どちらが上等でどちらが下等というものではない。しかし、国の戦略を考える場合は、この二つの視点が不可欠だと言っています。巨視と微視と。

 今日のテーマの鳥の目と虫の目ではなく、小説家として見た場合には、司馬遼太郎と来ると松本清張、山本周五郎と来ると藤沢修平や池波正太郎が対辺に来そうに思います。この五人の中で一番読まなかったのが、山本周五郎の作品でした。読んでみたいと思います。

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