さらに、田村氏は、「米欧が国際ルールを決める。かつてスキーのジャンプ競技でスキー板の長さが制限されて以来、日の丸飛行隊が失速したのを思い起こせばよい。国際通貨ゲームでは米欧から介入は「反則」とみなされるのが現実だ。お札を刷ることだけが合法なのだが、野田氏も安住氏も気付いていないようだ」と書いています。
通貨安競争のトップを走る米国の場合、連邦準備制度理事会(FRB)がリーマン後、現在までに3倍以上もドル資金を発行してきました。これに対して、日銀は資金供給の伸びを平時並みに抑え、昨年3月の東日本大震災が起きて初めて2割増やしましたが、5月からは逆に減らしてきました。
円の対ドル相場は5月からぐんぐん上がり「超円高」と呼ばれるようになったことは、誰もが批判しているとおりです。日本が円高是正したければ、日銀が円をかなりの規模で継続的に刷る「量的緩和政策」に転換すればよく、欧米からもクレームは来ないのです。米欧金融界の意見を代表する英フィナンシャル・タイムズ紙は10月31日付社説で、「日銀はより大胆な量的緩和政策を打ち出せ」と勧告しているくらいです。
超円高の主因は米欧の金融危機ではありません。田村氏が何度も指摘してきたように、日本は国際的非常識な日銀政策のために、超円高とデフレ不況を呼び込んでいるのです。
政府(実体は財務省)の為替市場介入には限度があります。円売り介入の資金はとりあえず、日銀資金によりますが、あとで財務省が政府短期証券(FB)を発行して金融機関から貯蓄を吸い上げて日銀と置き換えます。FBの発行枠は150兆円ですが、使える残りは23兆円で、10月31日のような7兆円規模の介入はあと3度しかできません。
円高に伴う為替評価損はすでに40兆円に上ります。150兆円以上もの貯蓄が国内投資に回らずに、値打ちが下がり続ける米国債などに振り向けられるという馬鹿なことが起こっています。
正解はだた一つで、日銀政策の転換です。日銀が介入資金を全面的に引き受け、政府が大規模かつ機動的な介入に乗り出します。スイス国立銀行が8月から展開するユーロ買い、スイスフラン売り介入方式が参考になると田村氏はいいます。
スイス国立銀行はこの8、9月で実にお札を3.2倍も刷って、ユーロを買い、スイスフラン高を止めました。日本も日銀資金をユーロ危機策に使うなら、米欧からの非難は免れるでしょうが、ドル安・円高対策には直接結びつきません。
残る方法はただ一つで、日銀がお札を刷って長期国債を購入する正真正銘の量的緩和政策です。同時に物価上昇率を前年比で3%程度まで引きあげるという目標を市場にメッセージとして流します。インフレ分を加味した国債などの実質金利は下がり、異常な円資産買いの流れが止まるでしょう。現在では日本の実質金利は米国よりも3%以上も高いので、欧州から逃げ出した世界の余剰マネーが円資産に向かっています。
円高是正に立ちはだかるのは肝心の財務省と日銀です。財務省は国債金利を低く抑える効果があるデフレを歓迎し、デフレを助長する増税にひた走ります。復興増税、さらに消費税と国際公約まで踏み込みます。
日銀は日銀資金が財政に使われると円の信認が失われると警戒し、量的緩和の効果を部分的にしか認めません。「名目の実効為替レートでは必ずしも円高ではない」「外貨資産の買い入れは政府の為替政策の範疇に属する」(白川方明総裁)とそっけいないことおびただしい。政治が目覚めない限り、日本は超円高を止められないと田村氏は述べています。
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