2012年3月8日木曜日

アップル、中国で商標権侵害で訴訟を受ける

 中国広東省のIT機器メーカーの唯冠科技深圳が米アップルを相手取って多機能携帯端末「iPad」の販売差し止めを求めた訴訟の審理が上海市の裁判所で222日、始まりました。この訴訟で、上海市の浦東新区人民法院(地裁)23日、中国側の訴えを退け、iPadの上海市内での販売継続を認めました。

ところが、唯冠は中国の全国各地で同様の訴えを起こしており、広東省恵州市の地裁は唯冠側の主張を認め、同市内のIT機器販売店に販売停止を認める判断を下しました。これに伴い、iPadの販売中止の動きが出ています。昨年12月に広東省深圳市の地裁が唯冠主張を認め、アップルは上訴し、29日に広東省の高裁で審理が始まっています。

中国でアップルを訴えた唯冠は米国でもアップルを相手取って訴訟を起こしていたことが24日までにわかりました。唯冠が、今回提訴した場所がアップルのお膝元である米カリフォルニア州サンタクララ市であるためにアップルや米国政府を過度に刺激し、米中の政治問題に発展する可能性も出てきたといわれています。

唯冠の背後には、中国の銀行が訴訟を操っているとの見方もあります。「iPad」の商標は、もともと唯冠の台湾のグループ会社が商標権を持っていましたが、2010年にアップルの関連会社に35000ポンド(450万円)で売却したといいます。アップルが全世界の商標権を購入したと主張していますが、唯冠側は台湾のグループ会社が売却したのは海外の権利だけで、中国での商標権は唯冠科技深圳が保有したままだと反論しています。

さらに唯冠はアップルが名前を隠して商標権を安く買っており、この行為は詐欺に相当すると主張していますが、アップルはこれについては、コメントを控えているようです。

唯冠は販売不振で経営が破綻状態にあり、中国国有の銀行、国家開発銀行、交通銀行など大口債権者が資金回収を急いでいるようです。このため「損失を補填しようと唯冠を操ってアップルから多額の金銭を引き出す狙いだ」との見方が多いともいわれています。

他にもアップルを標的にする動きが出ています。スマートフォンの「iPhone」商標権を主張する中国企業があるほか、中国の作家連盟がiPhoneなど向け配信サイトで著作権が侵害されたとして、アップルに損害賠償を求める訴えを北京市の地裁に起こしています。

iPhoneについては、浙江省の懐中電灯を扱う企業が商標権の保有を主張していることが明らかになりました。

中国国営の新華社によると、少なくとも39の中国の企業や個人がiPadiPhoneの商標を登録しようとしており、うち6件が当局から予備的な許可を取得したといいます。

中国では、知的財産権案件の裁判所の受理件数が、飛躍的に増えています。2010年度の商標権については8000件を超え、特許も5000件を大きく超えています。知財権については、従前以上に担当者をおき、自社の権利を主張するとともに、他社の知財権に触れていないか、徹底した対策が必要になっています。

0 件のコメント: