2012年3月11日日曜日

公務員の守護神―江利川毅(1)

 公務員の待遇を守ることに邁進する江利川毅・人事院総裁(64)とは、いかなる人物か。

みずほ証券調査によると国と地方公務員のボーナスの平均支給額は76.5万円だから、民間平均の2倍以上でした。

菅政権は「震災復興のために財源が必要になる」として、公務員給与の7.8%引き下げを盛り込んだ「国家公務員給与給与削減法案(賃下げ法案)」を閣議決定し、国会での早期成立を目指してきました。

国家公務員の給与は人事院勧告(人勧)で決まり、地方公務員もそれに準じて給与水準が決定されてきた実態があります。

江利川氏は、昨年119日の衆院予算委員会で「人勧無視は憲法違反だ」と賃下げ法案を突っぱねる答弁をして、まずは人勧の「0.23%の引き下げ」を受け入れるよう求めました。結果は「削減0%」でした。

江利川さんが、“人勧無視は憲法違反だ”という見解を示すと、勢いづいた自治労は日教組出身の興石東・幹事長らに働きかけ、民主党内に“労働基本権拡大を棚上げする気か“という空気を釀成しました。

そのまま会期末を迎えて審議は時間切れ。その結果、7.8%減どころか0.23%減も成立せずに満額支給となりました。

江利川氏らの戦術に、議員たちは完全に手玉に取られました。元経産官僚で政策シンクタンク「政策工房」代表の原英史氏はこう語っています。

人勧の無視は憲法違反、という江利川氏の主張は全くの間違いです。憲法のどこにもそんなことは書いていません。人勧はあくまで国会が国家公務員の給与を決める際の材料にすぎない。それを真に受けた政治家も不勉強というほかはりません。

江利川氏が公務員側に肩入れした理由は何でしょうか。“チーム霞ヶ関の総大将にほかならない。”

 江利川氏が、「スーパー官僚」の座を得たのは、96年に大臣官房審議官として菅直人厚生相の下で「介護保険制度」の導入準備に関ったことでした。

004月にスタートした介護保険制度は、40歳以上の国民全員から保険料を徴収しながら、その恩恵を受ける人がごくわずかしかいない“掛け捨て制度”でした。施行から約10年経った今でも、要介護認定率は高齢者人口の16%(09)。週刊ポストは、国民からカネを巻き上げるために作られた「第2の健康保険」だと繰り返し指摘してきました。

「介護保険導入の功績」について、江利川氏は、「知的水準の高い職能グループの代表であられる医師会は、まさか反対なさいんませんよね」というトーンを講演などに織り込みました。言外に“知的水準の低い一般国民から保険料を巻き上げる”との信念が窺えます。

官僚の出世の条件は、「国民を豊かにし、幸せにすることでは」ではなく、増税を実現した財務官僚が偉くなっていくことからもわかるように、「国民からカネを巻き上げて、省益を拡大させること」こそ、霞ヶ関での昇進課題です。

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