「日経平均株価の史上最高値は89年12月につけた3万8915円でしたが、22年たった今も、はるか下辺の8千円台低迷している。
長期間の低迷の背景は、実に単純明快だ。「会社のオーナーは株主」という民主主義・自由主義経済国家ではあたり前のコーポレートガバナンス(企業統治)原則が、日本では通用しないからだ」
所有し売買もできる「物的証券」、企業の利益を享受する「利潤証券」、企業のオーナーたる「支配証券」。株式価値を構成する3大要素のうち、日本では「支配証券」の価値が完全に欠落しています。
そもそも企業や株式の価値はどのように計算するのでしょうか。
まずは、ビジネスの競争力や技術力を根拠にした将来予想の損益計算書や貸借対照表をもとに、毎年の現金収支であるキャッシュフロー(CF)を計算。次に、各年のCFを金利などの割引率で現在の企業価値に引き直す「ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)」手法を用いるのが一般的です。これが、「利潤証券」の部分です。
企業価値から借金などの有利子負債を差し引いたのが広義の株主価値。発行済み株式の過半数を握らない限り経営をコントロールできないので、実際に取引所で流通している上場株の市場価値を計算する場合、広義の株主価値から「支配プレミアム」を差し引けばよいわけです。
ベンチャーなどは売買が容易でないので、さらに「流動性プレミアム」を差し引いた価額が非上場企業の株主株となります。
「タダ」で日本の株価を上げる方法
経済学者などによると「支配権プレミアム」は企業価値の30%強、「流動性プレミアム」は同15%程度を占めるとされます。
日本では、ただでさえ買収の頻度が低いうえ、大株主が「経営陣は交代せよ」と要求すると、即座に「ハゲタカ」「短期主義」とのレッテルを貼られます。株主権を軽視した判例も多く、「支配権プレミアム」の期待値が反映されない仕組みになっています。
これまで兆円単位で財政出動や金融政策を繰り返してきましたが、株価が個別企業の業績というより世界経済における日本経済の相対的地位次第なので、効果は見極めにくいわけです。
失われた「支配権プレミアム」を反映させるルール改正だけなら、お金はかかりません。取締役の責任を強化し、資本家の「アニマルスピリット」を取り戻す。これこそ実に投資効率の高い経済政策ではないかと松浦氏は書いています。
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