帝は高台から四方を見渡された。
夕方だというのに、竃から夕食の準備のための煙立ち昇っていない。民が貧しく炊くものがないためではないか。都の近くがこのようであれば、地方はなおさら厳しいことであろう。民の負担を除いて、国を富ませねばならない」とおっしゃった。そのお言葉通り、「向こう3年、税を免ず」と詔され、民の税金や労役をすべて免除された。
それからというのも、帝は着物が破れるまで着て、履物が擦り切れるまで履き、御殿の垣が崩れ、屋根が破れてもそのままになさった。夜は屋根の隙間から星の光が見え、雨天には雨が漏れる有様になった。しかし、少しも修理されようとせず、木の箱で雨を受け、雨の漏らないところに移って過ごされた。
そして3年経って、再び高台に立たれると、竈の煙があちらこちらから立ち昇っているのが見えた。それを見て帝は、民の竈は賑わいにけり」と喜ばれ、朕は、すでにと冨んだ」とおっしゃった。
これを耳にされた皇后は、「皇居の宮垣は崩れ、雨漏りしているのに、どうして冨んだといわれるのですか」と問われた。すると帝は、「政は民が本である。その民が冨んでいるのだから朕も富んでいるのだ」とお答えになられた。
明日に続く。
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