2012年6月24日日曜日

「土建国家」のツケは庶民に

中国では官主導の開発が都市、地方を問わず進んでいます。これは、たしかに経済成長のけん引役ではあるのですが、当局が強引な立ち退きなどを迫る例も多く、「土建国家」のツケは庶民に回りがちです。
大型トラックが昼夜を問わず、うなりを上げて行き交います。鉄鉱石を含んだ山盛りの土が運び出されます。北京から東へ220㌔の鉄鋼の街、河北省唐山市の東部にある灤県の露天堀りの鉱山です。

「私の家はあそこにあった」。元住民の王占榮(66)は採掘現場のかなたを指した。採掘が本格化して4年だが、水田もあったという面影はない。2005年以降、王ら5千人を超す住民は先祖代々の土地を追われました。地方政府が鉄鉱石が眠る土地の売却で利益を得たいと考えたからです。
採掘するのは、世界2位の鉄鋼メーカーで、河北鋼鉄集団の傘下にある唐鋼灤県司家営鉄鉱。企業側は1人当たり135千元(170万円)に加え、農地の広さに応じた補償金を地元政府に支払ったといいます。だが、王が手にしたいのはわずか16800元(約218400円)。差額は地元政府の懐に入りました。
あてがわれたアパートの手抜き工事も発覚しました。1976年の唐山大地震では24万人が死亡。鉱山で多くの人が生き埋めになった記憶が生々しく、王らの不安は募りました。地元政府は、新たに、鉱山労働者のアパートを建てる広大な土地収用を決定しました。昨年末、警官ら100人超を動員し、住民に立ち退きを迫りました。絶望した劉玉龍(73)ら住民7人は手首を切るなど抗議の自殺を図りました。
全員が一命をとりとめたが、事態に変化はありません。劉は「補償が少なく、やり方も不公平だ」と憤ります。立ち退き時にひどく殴られた後遺症で、つえが手放さない生活になりました。
悲劇が始まった05年はどんな年だったでしょうか。世界一の鉄鋼生産国になっていた中国が鉄鉱石をむさぼるように求め、英豪リオ・ティントなど資源メジャーは強気の交渉姿勢に転じました。中国は初めて鉄鉱石の国際的な値決めの前面に立った06年度に、19%の値上げをのまされました。
価格高騰を受け、中国企業は再び国内に目を向けました。そもそも唐山は中国三大鉱区の一つだのです。
「品質の悪い灤県の鉄鉱石でも、掘ればぼろもうけだ」。
企業と地元政府の思惑が一致しました。

中国の人権問題を告発する団体、維権網の王松蓮は「地元政府の多くは土地を売るぐらいしか収入増の手立てがない」とみています。中国では司法による救済も期待しづらい体制になっています。まだまだ、泣くのでしょうか。

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