「今、取り壊すなら補助金返還額を含めて3億円かかります。ただ、当初予定まで続けた場合でも、よく見積もって累積赤字は1億1千万になります」。
昨年11月、新潟県上越市役所の一室に、担当職員の声が響きました。
議題は平成13~15年導入の4基の風力発電機でした。故障続きで、見込んだ発電収入がなく、好転する見通しもない。引くも進むも金がかかって苦難ということです。
風力発電は9年の地球温暖化防止京都会議(COP3)などを機に、全国で導入が進みました。独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、昨年3月現在で全国の風力発電機は1683基に上り、10年間で約8.5倍になったということです。
運営がうまくいかず、赤字を垂れて流す自治体は上越市だけではありません。
長崎県諫早市で10~14年に導入された3基の風力発電機は、昨年2月の落雷で2基が停止中。残る1基も不調で発電ができません。
和歌山県広川町では、17年の導入後、騒音問題で夜間と早朝は運転を停止。21年末の累積赤字は約2100万円に達しています。
21年1月19日、上越市の風力発電機に雷が直撃し、羽根が破損しました。そして、業者に連絡した職員は絶句しました。
「羽根を全部交換する必要がある」「新たな避雷対策はできない」「代わりの羽根はインドに在庫がある。運ぶのに半年かかる」。業者はそういうと、修理見積もりで6千万円を提示したといいます。
「そんなカネは議会が絶対通さない」
頭を抱えて別の業者に問い合わせると「修理だけなら200万円」との返事がきました。とりあえず、修理はできました。しかし、21年度中の風力発電機の停止期間は345日に達しました。
これは、自冶体職員が業者の“言いなり”になっているのは情報があまりにないためです。専門知識のある職員がいないのに、自治体間の連携もありません。
「もう、どうしたらいいのか分からない。相談できる場所がほしい」(諫早市)という悲鳴も上がっています。
自治体が無理に風力発電に手を出した背景には、「国の補助金」があるといいます。
「国の補助金がなければ、そもそも風力発電企業はやっていなかった」と、昨年11月の記者会見で、京都府知事の山田啓二氏も責任の一部を国に転嫁しました。
知事の心中を府職員は、「国が補助金で、建設を促しておきながら、『やめるのだったら補助金を返せ』というのは酷だと知事は思っているのでしょう」と言います。
一定期間運営することが補助金支給の条件です。自治体に補助金を出しているNEDOは「期間内に事業をやめた場合は返還してもらう」と素っ気ないものです。
国は言いっぱなし。疑うことをしない自治体は業者の言いなり。そして事業をやめることすらできないという始末です。
これでは、「自治体職員に事業運営は無理」と言われても不思議はありません。しかし、これらの失敗した金も国民の税金で賄われています。もう少し慎重で謙虚であってもいいでしょう。
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