2010年8月21日土曜日

日銀の円高への介入

 11日の外国為替市場で円相場は一時1ドル=84円72銭まで上昇し、95年7月以来15年1ヶ月ぶりの高値をつけました。米経済の減速懸念から米長期金利が低下し、日米金利差の縮小したことによって、円買い・ドル売りを勢いづかせています。これは、「円高というよりもドル安の局面」といえます。

 日米の金利差が3%を下回れば、資金は日本に逆流するというのが、一般的な見方ですが、現在の日米の長期金利の差は、2%を切っています。円高の進行は、起こるべくして起こったといえます。誰もが予想できたことです。

 FRBの資産規模は、リーマン・ション後2.6倍に膨れあがっており、ドル下落の主因となっています。FRBのバーナンキ機長が絶対にあってはいけないと思っているのは、金融政策が後手後手に回って、デフレの罠に嵌った「日本の失われた20年」であり、「米国の日本化」への懸念です。

 日銀は10日の金融政策決定会合で金融政策の変更を見送り、白川方明総裁は会見で円相場や市場の動揺について「注意深く点検する」と述べたにとどまりました。

 輸出型の主要企業の今期の想定為替レートは平均89円70銭です。トヨタ自動車や日産自動車の想定レートは、1ドル=90円に置かれていました。95年4月につけた史上最高値の1ドル=79円75銭もありうるのではないかと巷では囁かれています。

 日本経済の先行きは、「円の支配者」日銀の手に委ねられています。この人たちが、このことを認識しているようには思えません。企業業績の悪化懸念から12日の日経平均株価も一時、今年の最安値を更新しました。

 今回の円高の引き金になったのは欧米の景気の失速懸念でした。日本にとって、何によりも心配なことは、円が続伸することで企業経営者の間に不安感が広がり、投資や雇用を控えさせることです。もう日本では、やっておられないと企業の海外移転が加速し、国内の産業空洞化の進行も懸念されます。これに伴う失業者も大幅に増えるでしょう。

 政府・日銀は、市場に対して円高阻止のメッセージを明確に発すべきです。量的緩和など一段の金融緩和策についても柔軟な対応が必要です。欧米との国際協調も進める必要があります。 市場では「欧米自国通貨安を容認し、輸出拡大で活路を見いだそうとしている」との見方が広がっています。G7が一致して「協調介入も辞せず」との姿勢をみせるべきです。一番被害を受けている日本が音頭をとって緊急G7を開くべきです。行動力が伴いません。政策対応が後手にまわれば、市場は投機的資金に翻弄されます。それを阻止するには、G7各国の連携がなにより大事です。

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