2013年4月11日木曜日

歳のせいで物忘れがひどいという誤解(1)~池谷裕二

 
今日も「老後の真実」(文藝春秋編)から脳研究者の池谷裕二氏の標題を取り上げました。

物忘れや記憶力の低下は、歳をとったことによる脳の衰え――そんなふうに思っている中高年の方がたくさんいらっしゃるようですが、池谷氏は違うと思っているようです。

脳は歳をとっても簡単には衰えません。むしろ、歳をとればとるほど向上する脳の働きもあるのです。それが直感力。直感力は40歳を過ぎてからのほうが鋭くなります。

直感力とは、無自覚的に、無意識にできてしまう能力のことで、何かを察する力や行間を読んだりする力のことです。

センスは直感の一種です。

状況判断が早いとか、的確であるとか、目が利くとか、そういうものもすべて直感です。
 贋作か本物かを見分ける骨董屋の目、これも直感になります。
 長年経験したことによって養われるのが直感力なのです。

直感と似た能力として「ひらめき」があります。しかし、脳の研究ではまったくの別モノで、脳内メカニズムが違います。直感とひらめきの違いは、理由を言葉で説明できるか、できないか、ということです。ひらめきは、思いついた後にその理由を説明できます。「あのときは気づかなかったけれど、今ならわかる。こうなって、こうなったからこうなったんですよ」という具合に。

しかし直感は、自分でも理由がわからない。ただなんとなくという感覚。理由を説明できなくても、「こうかも」という確信。そういうものが直感ですというわけです。

言葉にならないけれど無意識に身体が覚えている記憶を「手続き記憶」といいます。一方、言葉で説明できる記憶は「陳述記憶」といって、人間の記憶は大きく分けるとこの二つのパターンのどちらかです。「手続き記憶」を司るのは脳の大脳基底核(=以下、基底核)で、身体を動かすことに関連したプログラムを保存しています。そして、直感も基底核から生まれるのです。

若い頃から積んだいろいろな経験によって直感力が養われていくということで、20代や30代よりも40代以降、歳をとるほど直感力が強くなる理由はそこにあるのです。

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