しかし、歳出カットと財政再建とを結びつけるのは間違いと藤巻氏はいいます。財政赤字の額と無駄遣いの額では桁が違うのです。無駄を省けば、財政再建ができるわけではありません。財政赤字がちょっと減るだけです。
歳出の中で一番大きいのは、社会保障費で、歳出の約4割です。
社会保障費は予算全体に対しては23~25%であるが、一般歳出でみると40%前後(2005年予算、43.1%)の大きさです。
地方の財源となる地方交付税は、地方支出で高いウエイトを持つ「民生費」(地方の社会保障費)を支えています。
社会保障費が歳出の4割を占める以上、歳出カットは社会保障費を中心にしないと効果がありません。社会保障費というのは、財政学では「所得の再配分」と位置づけられています。「社会保障費カット」を「歳出カット」と言い換える評論家や政治家はずるいと思います。
ラフな計算をしますと、今年度の予算において歳出は90兆円ですから、その4割、約36兆円が社会保障費ということになります。防衛費や国家公務員の給料、その他の歳出の合計が54兆円ということです。
歳入は46兆円ですから、それで「その他の歳出54兆円」をまかないます。すると社会保障費の36兆円は、借金でまかなっていることになります。我々の社会保障は、すべてを子ども、孫、ひ孫からの借金に頼っているということです。現在、借金額が大きすぎて、我々の世代のうちに完済するのは無理なわけです。
社会保障費は「所得の再分配」だと言いました。「再分配」と言っても、現在は「富裕から貧者」への再分配ではなく、「未来世代から現代世代」への再分配をしていることなります。
経済を拡大して歳入を増やせないのなら、社会保障費をカットしなければなりません。そうでなければ、未来世代があまりにもかわいそうです。
「消費税を1%上げるごとに、国の歳入増加は2兆円と考えてよいか思います。2011年度の赤字は44兆円。2012年度の赤字も予算段階で44兆円ですから、それを黒字化するためには、44兆円÷2兆円で22%の消費税増税が必要になります。
現在、960兆円という借金があるわけですから、仮にそれを毎年10兆円ずつ96年間で完済しようとするとします。この10兆円を捻出するためには、さらに5%の消費増税が必要になります。ここまでで27%の増税、すなわち消費税は32%です。
960兆円も借金があると、すぐにではないにしろ、1%あたり9.6兆円の支払い金利増になります。
消費税の10%への上げでは、残念ながら「焼け石に水」だとうことです。消費税を10%にしても、960兆円の累積赤字はさらに増え続けていきます。
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