「福島の状況はチェルノブイリに比べ限定的で被曝線量も低く、怖がる必要は全くない」、「福島の子どもたちの甲状腺での線量は低く、このレベルで何らかのリスクがあったケースはない」-。日本財団がこの9月、福島県立医科大で開催した「放射線と健康リスク」に関する国際会議に出席した内外第一線の専門家は、2時間を超す長時間記者会見でこう言い切りました。わたしの記憶では、東京のマスコミは取り上げなかったように思います。
日本財団では1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の後、20万人を超す子供の国際調査を10年以上支援。会議は、この中で培われた世界保健機関(WHO)や国際原子力機関(IAEA)、国際放射線防護委員会(ICRP)など専門機関とのネットワークを利用して実現し、両事故の違いが会議の焦点の一つとなったといいます。
チェルノブイリ事故では大爆発した炉が2週間にわたって燃え続け、ロシア、ウクライナ、ベラルーシを中心に広大な地域に放射性物質が飛び散りました。自身も被災者であるウクライナ医学アカデミーのチュマック博士は「福島の状況はチェルノブイリとかなり違う」とした上で、避難を余儀なくされた場合の悲惨さとストレスを指摘し、「住民が福島を離れるのは害の方が大きい」と語るなど、冒頭の見解が大勢を占めました。
環境省は、年間の被曝量が20ミリシーベルトを超える地域を「特別除染地域」に指定し国が除染を行う一方、20ミリシーベルト以下~1ミリシーベルト以上の地域は自治体が除染を行い国が財政支援する、としました。当初、5ミリシーベルト以上を下限としていましたが、自治体や住民の反対で1ミリシーベルト以上に広げたといいます。
果たして1ミリシーベルトが実現可能な数字だろうか
チェルノブイリの除染作業は2065年の完了を目標に現在も続けられています。5ミリシーベルト以下から1ミリシーベルト以下にしたことで、福島県内に限られた対象地域は周辺の栃木や茨城、群馬、千葉にも広がりました。莫大な費用を見通すのも難しく、作業を担う自治体や住民の負担も重くなります。
加えて、年1ミリシーベルトとなると世界平均で年2.4ミリシーベルトとされる自然放射線との兼ね合いも出てきます。
国際会議でもICRPのゴンザレス副委員長はインドをはじめ世界各地に高い放射線を発する地域がある点を指摘、「年20ミリシーベルトは危険な数字ではない」と語りました。
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