それでは、従来、中華人民共和国政府および台湾当局が、いわゆる歴史的、地理的ないし地質的根拠等として挙げている諸点を見て行きましょう。
尖閣諸島が日本の領土という証明は、はからずも「領有権」を主張している台湾および中国側にあったのです。まず台湾からいきましょう。中華民国59(1970=昭和45)年に台湾で発行された『国民中学地理科教科書』(初版1970)所載の「琉球群島地形図」には、日本と台湾の国境線が台湾と尖閣・八重山諸島の中間に引かれており、島嶼名も「尖閣群島」と日本名で記載されていました。
ところが、その翌年、中華民国60(1971=昭和46)年に発行された同教科書(改訂版1971)では、国境線が台湾・尖閣諸島と八重山諸島の間に引き直され、「尖閣諸島」の島嶼名も「釣魚台列嶼」と書き改められました。
つまり、台湾『国民中学地理科教科書』を例に取れば、少なくとも、1970年までは、台湾が尖閣諸島を「日本の領土」であると認めていたのですが、翌1971年には、台湾は尖閣諸島の領有権を主張したのに伴って、国境線と島嶼名が変更されました。
では、もう一つの当事者・中国の場合はどうかと言うことですが、1958(昭和33)年、北京の地図出版社から発行された『世界地図集』所載の「日本図」の場合も、「尖閣諸島」は台湾同様に「尖閣群島」と日本名で記載され、国境線も台湾と尖閣・八重山諸島の中間線に引かれていたのです。
つまり、台湾・中国両国は共に、ECAFEによる報告書発表以前は、尖閣諸島を「日本の領土」と認識していた訳です。ところが、資源があると発表されると自分の領土と主張してきたわけです。
ところで、この領土問題を起こした海底油田ですが、ここに海底油田があるかどうかです。日本側の調査報告では1095億バレル(約150億t)、中国側の1980年代初頭の推計では700~1600億バレルとされています。しかし、米国CIA(中央情報局)の試算では390億バレル(1977年推計)、旧ソ連の地質学者に至っては、75~112億バレル(1974年推計)とし、最新の科学調査ではわずか32億バレル程度とも言われています。蓋を開けてみれば案外大した事が無いのかも知れません。とは言うものの、海底油田の有無が問題ではありません。尖閣諸島はあくまでも「日本の領土」なのです。「資源」に目が眩んだ台湾・中国両国、特に近年、東支那海の日本側排他的経済水域内で、中国の艦艇が無断に侵入して来ています。1999(平成11)年には、中国の海軍艦艇が8回31隻、海洋調査船が15回25隻、日本側に通告せずに繰り出しています。
中国への警戒を怠るべきではありません。かつて、南支那海の南沙諸島(スプラトリー諸島)において、フィリピンが主権を主張する小島を、警戒の隙を突いて中国海軍が奪取した事がありました。いや、もっと身近な例では、「竹島」があります。その意味でも、日本は「日本の領土」である尖閣諸島の領有権を、台湾や中国に気兼ねすること無く、より強く主張すべきです。と同時に、容易に占領(奪取)される事がないように、より一層防衛に努めるべきと言えます。(明日に続く)
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