2009年10月20日火曜日

鞆の浦埋め立てで広島県が控訴

 広島県福山市の鞆の浦埋め立てで広島地裁は、県と市に対して、「鞆の浦の景観は文化、歴史的価値があり、国民の財産である」として、工事の「差し止め」の判決を行いました。この判決に対して、鞆の浦で映画「崖の上のポニョ」の構想を練った宮崎駿監督は、「今後の日本をどうするかについて、いい一歩を踏み出した。県は控訴しないほうがいい。裁判官の勇気に敬意を表します」と話しました。
 ところが、広島県は控訴しました。その理由が「景観利益の範囲が極めてあいまい。判決が確定すれば、今後の公共事業の実施に多大な影響を及ぼす」として、控訴することを決めました。
 しかし、この計画は、鞆の浦を埋め立てて、200m近い橋を建設するというものです。鞆の浦は、国際記念物遺跡会議も世界遺産級と認めているのです。わたしも、以前に行きましたが、多少、道幅も狭いのですが、それに勝る景観です。時代を遡ったような錯覚にとらわれました。江戸時代に朝鮮通信使も必ず鞆の浦を通りました。もし、ここに計画のような埋め立て工事や橋をかけると、まったく別の景色になります。昔、日本橋の上に高速道路を走らせて、日本の景観をぶち壊した道路建設族は、ここでも壊そうとしています。せいぜい、自宅の豪勢な庭に鞆の浦のジオラマを作って、こどもと遊んでいたらいい。
 この景観を壊そうとしている人が、どういう人かと調べてみますと、控訴した広島県知事は、藤田正明氏です。藤田氏の祖父は参院議長をやり、母方の祖父は広島県知事という政治家一家です。10月17日の日刊ゲンダイによりますと、藤田氏は、「キング・オブ・ゼネコン知事」といわれているようです。祖父は、ゼネコンの「フジタ」の創業者。藤田知事も藤和不動産の社長を務めたことがあります。広島県は、県債残高が2兆円を越しているという極めて深刻な財政危機です。それが、なぜこれほどこだわるのか、見えるような気もします。藤田知事には、黒い霧も尽きず、4期当選の05年には、広島地検が後援会事務局長を政治資金規正法で逮捕しています。8000万円もの使途不明金が明らかになりました。また、選挙のたびに「対策費」と称したウラ金が県議などにばら撒かれていたことも暴露されています。この件では、さすがに県議会で知事への辞職勧告決議が2度も可決されましたが、「知事の座にいないと取材も報道もなくなり、真相解明ができなくなる」とデタラメな理屈を捏ねて居座っています。そして、今回の控訴です。こういう知事を選んだことに選挙民は、恥ずかしいと思わねばなりません。しかも、4選もさせているのです。「地方自治」、「地方自治」と念仏のように言われますが、果たして地方に任せて大丈夫でしょうか。

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