2010年5月10日月曜日

「ハゲタカ」の真山仁の「マグマ」

 友人が「面白い」と言うので読むことにしました。角川文庫です。地熱発電の話です。この小説の舞台になる阿蘇山の地熱発電所は、高校生のときに前を通ったことがあります。当時は、小規模で、研究をただやっているようにしか思えませんでした。
 この小説では、野上妙子という女性が主役です。アメリカのファンドにニューヨクで採用された才媛です。頭もよく、背も高く、美人です。彼女のファンドが、地熱発電会社を買収し、彼女はその社長として、赴任します。
 背景には、原子力発電所は危険であり、点検、廃棄コストなどのトータルコストを考えると決して安くない、唯一の被爆国の日本は、原子力発電を撤廃したらどうかというところから、スタートします。
 これに彼女の直接の元上司の大北、今の上司の街田顕一が、ドロドロした話で絡んできます。このあたりは、ハゲタカに似た構成です。地熱発電所長の御室耕次郎が、高温岩体発電所の建設に挑戦します。病をおして、これを完成させます。ラストで、この開所式のテープカットを彼女と御室の妻千歳が行います。
 原子力の高速増殖炉“もんじゅ”が稼働したことが報じられていますが、この小説では、高速増殖炉は非常に恐い技術であると述べています。原子力発電は、“神の手による火”といわれたりしていますが、果たしてそうなのか、疑問も呈しています。
 火山の上にあるともいっていい日本は、地熱発電は、有望な発電方式ですが、可能性の高いところの多くが国立公園内にあり、環境庁などの規制が厳しく、建設は難しいと述べています。たしかに地熱発電は、母なる地球が人間にくれたものかも分かりません。温泉だけでは、もったいないでしょう。小説でも地熱発電の可能性を書いていますが、その実現の困難さも書いています。
 わたしの別の友人は、今、バリ島におり、地熱発電をやっています。20年間は、住民から電気代を徴収でき、20年後は、インドネシア政府に渡さねばなりませんが、ビジネスとしても、成立するそうです。
 最後に、主人公の野上妙子が、なぜ美人である必要があったのか、分かりませんでした。伏線に彼女の恋などが用意されているかと思いましたが、まったくありませんでした。

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