2009年7月19日日曜日

辻井伸行を支えた横山幸雄

 米テキサス州のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで盲目の辻井伸行氏が優勝し、世間を騒がせました。この時、誰もが不思議がったのが、楽譜をどうして読むのだろうということでした。点字の楽譜を指先を頼りにピアノを弾くという手段もありますが、かれは耳に頼ったようです。右手だけの音や、左手だけの音を録音した“耳で聞く楽譜”を使いました。しかし、誰が指導したのだろうと不思議でした。こういう人には、やはりいい師がいました。横山幸雄氏で現在38歳、まだまだ現役です。横山氏も1990年のショパン国際ピアノコンクールで3位に入った人で、世界を舞台に活躍しています。
 横山氏が辻井氏にあったのは、辻井氏が中学生のときで、このときは、音楽家としての才能が突出しているとは、感じなかったようです。コンクールでも通用すると思ったのは、昨年からだそうです。コンクールに出かけると決まってからは、週1回のレッスンを行っていたのを「行くからには、恥ずかしい演奏をさせられない」と、今年の4月からは週2回に増やしました。渡米1週間前には、毎日レッスンを行ったようです。ファイナルを控えた6月上旬には、横山氏自身のリサイタルが間近にあったにもかかわらず、「行かないで公開するのは嫌だ」と渡米し、24時間足らずの滞在時間の中で、深夜と朝に十数時間のレッスンを行いました。
 これほどに横山氏が辻井氏にこだわるのは、「コンクールの入賞はスタート地点で方向を示してあげないといけない」と、後進の育成に力を注いでいるためです。このような師に巡り合って初めて辻井氏のようなピアニストが生まれるのでしょう。しかし、今後、辻井氏はどうするのでしょう。耳で聴いて、ピアノを弾くのは、相当にハンデイキャップがあります。今回以上に活躍できるのでしょうか。横山氏も辻井氏のレッスンを見るのは、自分の勉強になる、あるいは刺激になるでしょうが、そうも面倒を見ておれないでしょう。今後のふたりの活躍と将来、どうなるのかが楽しみです。

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