EMSには、単純生産だけ請け負うOEM(Original Equipment
Manufacturer)型と、開発や設計なども含めた、より幅広い受託サービスを行うODM(Original
Design Manufacturer)型があります。
最大手の鴻海は、その従業員数が100万人を超えています。2007年度が55万人、2010年度が80万人ですから、その成長スピードにはスサマジイものがあります。売上はざっと10兆円。メーカーからEMSに支払われる加工費は意外に安く、たとえばアップルのiPhoneの場合、一台を組み立てておよそ10ドル(約800円)と言われています。それで10兆円を稼ぐとしたら、単純計算では年間125億台を生産していることになります。日本企業の場合は、巨艦と言われるシャープ堺工場の生産能力が、40型液晶パネルに換算して年間約1560万台分と言われます。
EMSをはじめとするアジアの企業では、日本人の経験豊富なエンジニアやマネジメントクラスの人材も活躍しています。わずか10年ほどの間に世界でもトップレベルの生産技術をみにつけた背景には、やはり高度な知識やノウハウの移転があったのだろうということは容易に想像できます。
実は、こうしたアジア企業で働く日本人の中には、あいつぐリストラで職場を失った人がかなり含まれています。
「最近、私の会社にも、日本の工場を辞めた優秀なエンジニアがどんどん来てくれるようになりました。とても苦労していましたが、今では手をこうしていれば自然に落ちてくるぐらい簡単に採用できるんですよ」と岩谷氏のところにも言ってくるそうです。
日本の大手メーカーで働いていたベテラン社員の年収となると、現地の感覚では破格の待遇です。さらに、1ヶ月に1週間は日本に帰って休めるように休暇と航空券も支給しているそうです。
日本人はまだ働ける人を60歳になったからといって辞めさせるのかと不思議がっていました。バブル後の経済の冷え込みで事業再編を迫られた企業から流出した人材の採用に特に熱心だったのは韓国のサムソンだったと言われています。
90年代から2000年代にかけてのサムソンの急成長はよく知られるところですが、その起爆剤となったのは日本からの技術者だったのです。
この人材の流出問題こそ、日本の家電メーカーが不振に陥った最大の要因であることは間違いないでしょう。「ものづくり大国」の秘伝のノウハウをライバルである海外企業に流出させないために垂直統合による国内主義・自前主義にこだわったにもかかわらず、結果的にそのこだわりが業積不振を招き、さらなるリストラと人材流出、それにともなう技術やノウハウの流出を招くという悪循環に陥っていると岩谷氏は言います。
幸之助氏は
「万物がつながっている社会で、ある特定のものだけが栄えることは、一時的にはあるかもしれないが、決して長続きはしない。すべてが共に栄える、共存共栄するということでなければ、真の発展、繁栄はありえない」と言っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿