1934年9月21日に四国、近畿地方を襲った「室戸台風」で松下電器も大きな被害を受けました。このときに幸之助氏が言ったのが、「こけたら立ちなはれ」で、立ち直ったというわけです。その時の危機と比べれば、越えられない苦難ではないということでしょう。
今回の日本の現況は、2000年以降に顕著になったデジタル化によってもたらされた環境変化に対応する戦略、戦術を立てられる人材が、相手方にはあり、日本企業にはいなかったと指摘しています。日本の家電メーカーは度重なるリストラによって、経験豊富な人材を数多く海外に流出させてきました。人材を軽視した傾向があります。今回もソニー、松下、シャープに限らず、多くの人に退職を迫りました。これまでも、このひとたちが大人しく詩歌や俳句などで余生を送ってくれていればよかったのでしょうが、まだまだ体力はあるし、会社に残った人よりも能力はあると自負しているひとは、海外企業の招聘に喜んで移りました。しかみ、日本での勤務条件よりもはるかにいい条件です。このひとたちの努力で、韓国、台湾、中国の企業は、早いスペードで日本をキャッチアップすべく成長しました。これに驚異的な円高です。爪に灯をともして来た企業も撤退の止むなきに至っています。
松下は何をつくっている会社なのかと質問された幸之助氏は、「松下は人をつくる会社です。あわせて電気製品もつくっています」と答えています。製品をつくるのは人である。だから優れた人材を育てれば優れた製品をつくることができるというのが、幸之助氏の基本理念です。ところが、現在の経営者は、まったく違った経営理念で動いていることは、自明の理です。
長引く円高の影響、2011年特有の現象としては、日本国内で地デジ移行の特需が終わり、東日本大震災やタイの洪水などの天災にも見舞われました。
幸之助氏は、こういう問題に突き当たっときには、「とにかく、考えてみることである。工夫してみることである。そして、やってみることである。失敗すればやり直せばいい」と、とにかく考え抜いて、工夫して、対策を立てていけば、道は開けると説きました。
また、幸之助氏は、「よく人の意見を聞く、これは経営者の第一条件です」とも言っています。問題に正しく対処するためには、まずさまざまな情報を知っておかなくてはならない。第一に「デジタル化」という大きな環境変化について考えていきます。
デジタル技術の特性として、同じ部品を使っていれば、製品の性能はまったく変わらないということがあります。
この手法で成功した代表選手を一社紹介するならば、アメリカのカリフォルニア州に本社を置く「ビジオ(VIZIO)」という会社でしょう。ビジオは、必要な部品を全面的に提携先の台湾メーカーから購入しているほか、商品ラインナップを売れ筋である30型、40型、50型の薄型テレビに絞っていること、自社工場を持たず,製造はすべてEMS (電子機器受託製造サービス)を活用していること、さらにアメリカでの販売チャンネルをマージンの低い倉庫型ディスカウントストアだけにしたことなどがあります。どれも日本メーカーでも簡単に出来そうですが、なぜかできません。
0 件のコメント:
コメントを投稿