内閣府は、今回の震災の物的資産の毀損額を推計16.9兆円としていますが、これが誤りだと原田氏は、書いています。
「岩手、宮城、福島の物的資産は、日本人一人当たりの物的資産966万円に、この3県の人口571万人を掛けて55.2兆円である。16.9兆円というと、この3県の人口の55.2兆円の物的資産の31%が破壊されたことになるが、ありえないことである。浸水があった地域の人口が前述の51万人で、岩手、宮城、福島3県の人口合計は前述の571万人である。この3県の人口は、内陸の盛岡市、仙台市の丘陵地帯、福島市に集中している。571万人に対して津波浸水地域の人口は51万人である。震災で破壊された物的資産は、せいぜい10%であろう」と毀損額の見積もりに疑問を投げかけています。
次に、
「東日本大震災で破壊された物的資産が16.9%兆円だとして、なぜ19兆円~23兆円の復興予算が必要になるのだろうか。壊れたのが16.9兆円なら、復興予算は16.9兆円ですむはずだ。
しかも、16.9兆円のうちの住宅、事務所、工場などの10.4兆円は私有財産である。ライフライン施設1.3兆円のうちのガス、電気、通信、放送施設も私有財産である。農林水産関係1.9兆円のうちのかなりの部分も私有財産である。すなわち、16.9兆円の3分の2の11.3兆円は私有財産、
3分の1の5.6兆円が公的資産とみなされる。
5.6兆円は公的資産であるから全額税金によって復旧しなければならないが、私有財産11.3兆円のすべてを税金で復旧するのはむしろ不公平ということになろう。半分を補助するとすれば、5.7兆円ですむ。すなわち、仮に16.9兆円の物的資産が破壊されたとしても、復旧費は5.6兆円に5.7兆円を足して11.3兆円ですむ。
日本政策投資銀行も岩手、宮城、福島、茨城の物的資産の被害額を約16.4兆円と推計しているが、過大である。
日本政策投資銀行推計は、これら4県の被害を受ける前の資本ストックと震災による被害率を掛け合わせることによって被害額を推計している。被害を受ける前の4県推計資本ストックは208.3兆円である。ところが、日本全体の資本ストックは1237兆円であるので、4県の資本ストックは日本全体の資本ストックの16.8%もあることになる。これら4県のGDPの合計は、日本全体の6.3%でしかない。4県の合計の資本ストックが、日本全体の6.3%、すなわち、77.9兆円であれば、それに被害率7.9%を掛けて、4県の資本ストックの被害額は6.2兆円と推計される。
震災という自然災害に対して、税金によって、被災者に新品の価格で補償するのは妥当ではないだろう。雷が落ちて家が焼けても政府は何にもしてくれない。大震災の時だけ100%以上の補償をするのはむしろ不公平ということになる。
関西社会経済研究所(現・アジア太平洋研究所)は、東日本大震災の地震と津波による直接の被害額を約17.8兆円と推計しているが、ありえない数字である。この推計は、明らかにに過大である。例えば、まず、住宅被害は全・半壊約15万戸、一部破損は約7万戸としている。
全・半壊の住宅は住宅のみで一戸当たり2000万円の損害、家財・外構設備費が1000万円の損害、合わせて住宅一戸当たり3000万円の損害、一部損壊の住宅は一戸当たり1000万円の損害として、これらを全・半壊、一部損壊の住宅数に掛けて15万戸×3000万円=4.5兆円、7万戸×1000万円=0.7兆円となるから、合わせて5.2兆円の損害と推計している。
確かに、新たに立て直し、家財道具も買い直すとすれば、一戸3000万円近くかかるかもしれないが、壊れたのは中古住宅であり、中古家財である」
と、原田氏の指摘に緩みはない。
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