元検事の郷原信郎氏の寄稿を基にしました。概ね、次のとおりです。
「検察審査会は、2回目の『起訴相当』議決を出しましたが、その議決書を読んで唖然としました。2回目の議決書には、新たな『事実』が付け加えられていたのです。
1回目の議決書の『被疑事実』には、こんなことが書いてありました。〈陸山会が平成16(2004)年10月に代金約3億4千万円を支払い、世田谷区の土地を購入したのに、会計責任者の元公設秘書大久保隆規、元私設秘書の衆院議員・石川知裕の2被告らと共謀の上、その年の収支書に記載せず、翌17年の収支報告書に土地を同年1月7日に取得したとして虚偽記入した〉と書いてありました。
要するに、不動産の取得時期と代金支払いの時期が2ヶ月ほどズレていた。これが政治資金規正法違反(虚偽記入)にあたり、小沢氏がこの違反に「共謀」したという話です。
これが国会議員を起訴して処罰を求めるに値するような事案かどうかは冷静に考えてみる必要があると思います。2回目の疑決書ではその内容がなぜか異なっていました。
今回の議決書に『別紙』として添付された『犯罪事実』を見ると、〈被疑者(小沢氏)から合計4億円の借り入れをしたのに、平成16年分の収支報告書にこれらを収支として記載せず、同収支報告書の「本年の収入額」欄に、過小の5億8002万4645円であった旨の虚偽を記入し―〉とあります。つまり、小沢氏から現金4億円が提供されたからという、不動産取得の原資となった収入も含め虚偽記入の犯罪事実として書かれていました。
検審の『強制起訴』という制度は、あくまでも検察の不起訴処分の不当性を審査するために設けられたものです。
そう考えると、1回目の議決で『起訴相当』とされた事実について、検察が再捜査して再び『不起訴』とした事実の範囲を超えた事実を、2回目の議決で『起訴すべき事実』にするのは、検審の強制起訴手続きの趣旨からいっても、明らかにおかしいと思います。検察が再捜査の対象とせず、当然、再聴取を受けた小沢氏にも弁解の機会を与えていない『犯罪事実』が、突然現れて、それで起訴されるなんてことがあっていいわけがありません。
ですから、今回のような場合、強制起訴はできないのではないかと考えています。もっとも、1回目の議決の範囲を超えた事実が2回目の議決に入る実態など予想されていませんから、検察審査会法上で『無効な議決が行われた場合の手続き』は定められていない。しかし、起訴議決が無効であれば、それに基づいて「検察官の職務を行う弁護士」を指定することは許されないはずです」と書いています。(明日に続く)
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