2013年11月28日木曜日

弱者を狙い撃ちする現代の地震

 江戸時代に、大地震のときには富裕な商人が蓄えてきた金や米を庶民に「再配分」することが行われました。大地震だけではなく、江戸で繰り返された大火のときにも、この種の再配分のおかげで庶民が立ち直ったり、潤ったりしたといいます。

 例えば、慶応の大火(1866年)のときには日本橋近くの豪商の詳細な支出記録が残っています。それによれば、材木商は大工や左官にはじまって釘屋、石灰屋、砂利屋、縄屋、綿屋、桶屋など驚くほど多くの零細な職業に支払いが行われました。

 現代はすっかり違っています。瀬戸内海を見下ろす神戸大学の高台には慰霊碑が立っています。阪神淡路大震災(1995年)で犠牲になった同大の関係者の碑です。それによれば、学生の死者は39人、うち37人は下宿生でした。

 下宿生は古い木造家屋に住んでいることが多く、それゆえ午前6時少し前の大地震で、多くが犠牲になってしまったといいます。ちなみに、神戸大学では建物はひとつも倒壊しませんでしたから、もしこの地震が昼間だったら、これらの学生は命を落とさずにすんだことでしょう。

 東日本大地震(2011年)でも犠牲者を年代別に数えると、60代が19%、70代が23%、80代以上も23%でした。一方、50代は12%、40代は7%、30代は6%でした。高齢者の割合は人口割合よりもずっと多かったというデータです。

 次に首都圏を襲う大地震でも、費用のかかる耐震補強もおいそれとはできない庶民の「地震弱者」に、被害が特に多くなることが心配されています。

0 件のコメント: