2013年8月7日水曜日

老化は治せる(8)

 ここで問題になるのは、内臓脂肪の蓄積が多くの病気を引き起こす元凶である点です。

 内臓の周囲にたまった脂肪細胞は、動脈硬化症、糖尿病をはじめ、多くの生活習慣病を引き起こします。炎症は、脂肪細胞が「炎症誘発性タンパク質」をたくさん生産し、血液を介して体中にばらまくために起こります。

 慢性炎症を起こす炎症誘発性タンパク質の正体は、「TNFα」や「PAI-1」などといったタンパク質です。もともとはガン細胞を壊死させる作用(つまり、ガン細胞を殺す作用)があることから命名されました。末期のガン患者が、がりがりにやせ細ってしまうことがよく見受けられます。「なぜやせ細ってしまうのか」という疑問がきっかけとなって、その原因物質を追求した結果、このタンパク質に突き当たったのです。

 懸命にガンをやっつけようと過剰に生産されたTNFαは、一方で、蓄積された脂肪や筋肉などをゆっくりと燃やして溶かします。燃やすということは、炎症です。つまり、TNFαが弱い炎症を引き起こしているわけです。弱い炎症によって脂肪や筋肉が溶けていくために、患者はガンの末期になると、次第にやせ細ってしまうのです。

 関節リウマチの治療では、このTNFαをブロックする治療が行われるようになっています。
 
 アディポネクチンというタンパク質は、糖尿病を防ぐ作用があり、ヒトの体内に広範囲に存在しています。アディポネクチンは、実のところ、内臓の脂肪細胞そのものが生産しているのです。つまり、適量に抑えられていれば、からだにとって脂肪細胞は必要な細胞だと言えるのです。アディポネクチンの濃度が高いほど、善玉コレステロールの濃度も高いというデータがあります。

 最新の研究では、悪玉とされる炎症誘発性タンパク質を抑える役割のある免疫細胞の1つ、「T細胞」が、脂肪組織のなかに共存していることが判明しました。

 老化にともなって、免疫細胞の働きがうまくいかなくなると、悪玉タンパク質が増え、善玉タンパク質が減ると見られるのです。

 

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