2013年8月20日火曜日

一知半解の安倍首相

 以下は、高野孟氏の日刊ゲンダイの「永田町の裏を読む」から拾ったものです。
 安倍晋三首相は、「中央公論」7月号の田原総一朗インタビューで、集団的自衛権の見直しに触れ、こう語った。
 「例えば公海上で日本の船を警護するためにいる米艦船に対して、ミサイルが飛んできた。近くにいた日本のイージス艦がそれを察知し、撃ち落とす能力も持っていた。見過ごせば何百人もの米兵が死ぬ。そうなれば、日米安保体制は『終わりの始まり』になるでしょう」

 これを読むと、この人が相変わらずの一知半解でデマゴギーを振りまいているだけだ。

 第1に、米艦船と近くにいる日本のイージス艦が公海上で日本の船舶を警護しているというのは、すでに相当緊迫した事態であって、当然、巡洋艦にせよ駆逐艦にせよイージスシステムを搭載しているに違いない米艦船は最大限の警戒態勢にある。

 その時に米艦船が気付かないミサイル攻撃を日本だけが気付くという間抜けなことは、まずあり得ない。しかも、日本のイージス艦はすでにデータリンクされているから、探知情報は直ちに共有される。

 第2に、イージスシステムは四方に向けたレーダーで全周450キロ以内の200の目標を探知し、それをコンピューターで瞬時に解析して複数の目標の脅威度を判定して迎撃の優先目標と手段を選択し、1018の目標に同時にミサイルなどを発射するプロセスを半自動・全自動で処理する。米艦が気付かないのを日本が察知し、「こちらで撃ち落としましょうか」などと電話で問い合わせる暇はない。

 第3に、日米の艦船は同じ作戦区域内で共同作戦に当たっているのだから、同時に攻撃されている。その時、日本艦はすでに自衛のために瞬時にイージスシステムを発動していて、これは自分に向かっているから撃ち落とす、これは米艦に向かっているから撃ち落とさないというような振り分けをすることは技術的に不可能である。その公海上での日米共同作戦が妥当かつ合法的な(つまり侵略ないし武力威嚇に当たらない)ものであったと仮定して、その時に日本艦が個別的自衛権を発動してミサイル攻撃を撃退しようとすれば、おのずと米艦の助けにもなる。つまり、集団的自衛権を法的に解禁しなければならない理由はどこにもないのだ。

 安倍は何をどう理解し、何が言いたいのか。サッパリわからない。

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