2008年8月10日日曜日

献氷

奈良市には氷室神社というのがあります。大仏殿のすぐ近くです。道路を挟んで、国立奈良博物館があります。樹齢400年の枝垂桜は有名で、奈良で一番に開花します。『氷の神』という珍しい神を祀った社です。天理市福住町にも氷室神社があります。仁徳天皇の62年に「額田大中彦皇子が、都祁(天理市福住町近辺の呼称)で猟をされた時に、野中に氷室を見つけ、都祁の稲置大山主命に尋ねたところ、『これは氷室といい、土を深く掘って、茅など敷きつめ、氷をその上に置き、その上を草で覆っておくと氷は夏になっても溶けません。暑いころ酒にひたして飲用するものです』と答えました。夏にオンザロックとは、粋なものです。皇子はその氷を持ち帰って天皇に献じたところ、天皇は歓喜せられました。これ以後、冬期に氷を貯蔵し、春以降に皇室へ献上するようになったそうです。奈良時代、長屋王に氷が送られたという木簡も出土しています。
 7月23日に天理市福住町の市民グループが古代に則り地元の復元氷室から奈良県庁までを時代衣装姿で荷車に乗せて氷を運びました。距離は、おおよそ17キロですが、山道ですので、結構大変です。今年2月に約3トンの氷をこの復元氷室に貯蔵し、7月21日に取り出したときには、989キロと約三分の一に減っていました。そして、7月23日、約30キロの氷2個をむしろで包み、厳しい暑さの中、運びました。朝5時に出発して、奈良県庁まで約5時間かかりました。
 いい時代に生まれたものです。いつでも氷が手に入ります。古代を偲んで、清酒をロックで飲むとしましょう。

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