世銀が15日に発表した「東アジア・大洋州地域経済報告書」は、円高是正を東アジア全体の利益になると論じていますが、こと韓国に関する限り、「短期的には日本からの競争圧力を受ける」とマイナス面を指摘しています。
韓国経済が円高是正や円安により打撃を受けるのは、同国経済が外貨に依存しすぎているからであると産経新聞の田村秀男氏は書いています。外国投資家による韓国企業株の保有残高とウォンの対円相場の推移を見ますと、2007年の夏の米サブプライム・ローン危機勃発、さらに翌年9月のリーマン・ショックを受けて外国勢が韓国株を実に3分の2近く売り逃げ、ウォンは暴落しました。ところが、日本では逆に超円高局面に突入し、韓国企業は一転して対日競争力で優位に立ちました。そこで、外国投資家は日本株を売って韓国株の再取得に動き、韓国株は上昇し、日本株は下がり続けました。
外国投資家の韓国株保有残高は、12年末には07年のピーク時を上回り、韓国国内総生産(GDP)比で31.8%(日本は14%弱)に上ります。短期債務はGDPの11%(97年は15%)と依然高水準にあります。外貨動向に制約された韓国は金融政策の機動性を失いました。
金利を大幅に下げればウォンは安くなります。
ところが、金利引き下げと急激なウォン安は、外国の金融機関を動揺させ、融資引き揚げとさらなるウォン安につながります。すると株式市場に伝播し、外国投資家は韓国株売りに転じるかもしれません。アジア危機当時や07~08年に起きた大量の外貨流出の悪夢が再び起きかねないわけです。
リーマン後はそれでも、日本の民主党前政権と白川方明前総裁の日銀が円高容認政策をとったので、外国投資家は対日競争力優位にある韓国の企業に投資し、韓国経済は好循環に恵まれました。ところが、今回、異次元緩和の黒田日銀政策のために、ウォンは㌦に対して多少安くしても円安には追いつけそうにありません。
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