税と社会保障の一体改革の議論はずれている
「社会保障の拡充のために税を上げなければならないと論議している人たちは問題がまったく見えていない。将来の社会保障の財源を確保するための消費税増税を含む『税と社会保障の一体改革』が必要という人たちは、消費税増税をすれば、将来の高齢者の福祉は確保されると考えているようだ。
超高齢化に向かう日本では、高齢者が多くなりすぎて、高齢者が少ない時には可能であった高いレベルの高齢者福祉を続けるためには、どんでもない増税が必要になるからだ。この認識なしに、現在、増税されれば、その増税分は現在の高齢者に分配され、将来の高齢者には分配されない。
これまでの高齢者が得ていた福祉を続けることはできないことを簡単な数字で説明しよう。社会保障給付費と名目GDPの比率を見ると、1970年には4.6%に過ぎなかったものが、2010年には24.6%になっている。
社会保障給付費と名目GDPの比率は、2010年の24.6%から2060年には53.5%まで28.9%ポイント上昇する。現行の赤字を埋めるためには増税を足して60%を大きく超える消費税が必要になる。こんな大幅な増税が現実可能とは思えない。
現行の5%、財政赤字を埋めるための増税を考えると、2055年の消費税は、20%余りとなる。
これなら実現可能な消費税率だろうが、1980年の高齢者一人当たり社会保障給付費は233万円、2010年は398万円だから、高齢者一人当たりの社会保障給付費を現行の水準より41.5%も減額することになる。
成長を続け、将来の若者を豊かにすることも難しそうだが、さらに、若者が豊かなのに高齢者年金は増やさないという難しいことをしなければならない。
政府の震災復興案は、19兆から23兆円の無駄遣いをして、10.5兆円の増税をするという案であるから、19兆円~23兆円から10.5兆円を引いた8.5兆円~12.5兆円の需要が増えるからデフレ却効果があるように思われるかもしれない。しかし、ゴーストタウンやゴーストビレッジを造るということは、造った後には需要が増えないということである」
要するに、政府の震災復興案は、財政再建にもデフレ脱却にも役に立たないのである。
「過去の復興策の浪費を検証し、冷静に考えてみれば、コストのかからない復興策は可能である。コストのかからない復興策は、被災した人々を直接助けることである。新たな産業の創設など、震災とまったく関係のないことに予算を使うより、人々を直接助けたほうが効果的に決まっている」
0 件のコメント:
コメントを投稿