2014年9月1日月曜日

「十八史略(21)―鮑叔牙と管仲⑩」

 小白一行は、日に夜を継いで駆け抜けた。先に到着したことは明らかである。そして、斉と魯の闘いになったが、斉は勝ち、鮑叔牙は騎馬隊を率いて、長躯、糾を追撃した。魯は、戦意もなくし、講和の条件を訊ねた。

「糾はわが君の兄上であるので、当方としては処分しにくい。魯において処刑していただきたい。ただし、管仲はこちらに引き渡してほしい」と申し入れた。

魯の国ひとたちは「可哀相に、嬲り殺しにされるのですよ。舌を噛み切って死んだほうが楽ですよ」と管仲に自殺を勧めたが、管仲は、

「嬲り殺しでもなんでも運命にしたがいます」と泰然自若にしていた。

「わたしを殺すつもりなら、主の糾と一緒に殺すだろう。これは、生きて出れそうだ」

結果は、管仲の予測どおりになった。

小白側に引き渡された管仲は鮑叔牙の推薦で登用された。

   小白は、国主になると、奇しくも姉の文姜が嫁いだ魯の桓公と同じ名を称した。

鮑叔牙は管仲が来ると自分の位を下げて、管仲を宰相に推薦した。妻をはじめまわりのひとからは、頭がおかしくなったのではと言われたが、鮑叔牙はあたまは冴え渡っていた。

桓公に対して
「殿は、斉の国主であることだけで、満足ですか、それとも天下の覇者になりたいのでしょうか」

すると桓公は、「なれるものなら、天下の覇者となって号令したい」と答えた。

鮑叔牙は、「それならばわたしの補佐ではかないません。是非、管仲を宰相にしなければなりません」

桓公も周囲も驚いたが、これまで鮑叔牙は、はったりを言ったこともなく、つねに正鵠を得ていた。鮑叔牙の推薦どおりに管仲を宰相とした。その後の斉の国力の伸張は、目を見張るばかりであった。

 

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