2013年6月5日水曜日

アップルの租税回避問題

 米上院の調査報告によると、アップル社は、4%の従業員と1%の顧客しかいないアイルランドの子会社に、少なくとも過去4年間、海外利益の2/3に及ぶ740億ドル(75700億円)を移転し、数十億ドルに及ぶ法人税の支払いを回避したとしています。
 
 これに対し、アップル社のクック最高経営責任者(CEO)は、グループ内の配当という形での資金供与は米国の法律では課税対象ではなく、すべて合法的な税務処理であると反論していることは、テレビなどでも報道されているとおりです。

今のところ、アップル社だけが標的にされていますが、同業のマイクロソフト社やヒューレット・パッカード社も米上院のヒアリングに呼ばれるかもしれないと言われています。英国では、スターバックス社がやはり国際課税で問題になっていますが、日本のスターバックス社は、ちゃんと税金を払っているそうです。

欧米各国ともに大規模な租税回避に対して、厳しい見方をしてきています。
 
 米国の法人税率は35%、実質税率でも30.5%です。このため、各国の税制の違いを利用して節税せざるをえないというわけです。理論的には、個人段階で、すべて課税できれば法人税は不要ですが、実際には個人段階の課税は不可能なので法人税があるわけです。

いずれ国際協調などによって各国の法人税率は一定の範囲内に収束していくだろうと高橋洋一氏は述べています。この問題は、当分は火種が消えるどころかもっと大きくなるでしょう。

2013年6月4日火曜日

中国政府の経済危機

実は借金まみれの中国政府

大手格付け機関による中国の格下げが相次いでいます。49日にフィッチが中国国債の信用格付けを「AAマイナス」から一段階引き下げて「Aプラス」にしました。

 
IMFによると、中国の公的債務のGDP比率は昨年末で22%にすぎません。日本の236%、米国の107%という財政状況に比べ、格段に健全であるはずの中国の国債がなぜ格下げされたのでしょうか?
 
 じつは中国政府の公表する公的債務には、地方政府の債務は含まれていません(日本や米国は地方自治体分を含めて公表)。おまけに中国の地方政府は借金まみれなのです。地方政府が資金調達のための特別会社を設立し、その特別会社から資金を借りる仕組みが全国的に行なわれています。いわば、トンネル会社を通じて資金調達する「迂回融資」にほかなりません。

 中国審計署(会計検査院)は、地方政府の隠れ借金を約11兆元(150兆円)と試算していますが、中国のシンクタンクの推計では約15兆元に上るといいますし、20兆元を超えると公言する人もいます。

「地方政府は調達した資金で過剰なインフラ投資を行っている。たとえば中国には80の空港が建設されたが、約7割が赤字」といいます。
 
 中国の隠れ借金はこれだけではなく、急ピッチで進んでいる鉄道建設の債務や、日本以上の少子高齢化が進む中での年金債務もあります。これら借金の総額はGDP100%を超えるとの見方もある。「次の世界的な債務危機は中国が発火点になる」という予想もあると週刊文春の5月30日号は書いています。