2012年3月28日水曜日

日本一の幸福者、本多静六の人生の秘訣(6)

 昨日からの続きです。

9.「人の上に立ち」成功する人の心得

品性が高尚な人は徳望が高まり、次第に社会の信頼と尊敬を受けて、自然に成功の域に達するものである。また、品性は自然に人格の香りとなって現れる。

その高尚な品性とは何かというと、

一、良心が健全で、責任感が強く、正直で公平廉潔であること

二、誠実で親切、仁愛に富むこと

三、意志が強固で、あらゆる誘惑に打ち克ち、正義を支持できること

四、礼儀正しく、野卑でないこと

私はいまだ二と四に欠けるから、立派な人格者とはいえない。ただし、一と三には自信があるためか、子弟の教育や山林農場などの監督を依頼されたり、また思いもよらない人から財産を信託されたりする。

社会人として成功するには、雅量と謙譲が必要である。社会的な事業を成し遂げるためには、時として後輩の下に立つこともある。そうした点からも、いかなる位置にも甘んじる雅量と謙譲の徳が求められる。

誰にでも快く使われる雅量がなければ、人の上に立つことはできない。誰にでも使われるくらいの人は「何でもできる」有為の人物である。低い地位や安い月給にも満足し、甘んじて使われる人ほど、他日、必ず成功して、人の上に立つ。

社交的に成功するには、親切心と礼儀作法が必要である。粗暴野卑で傲岸不遜な態度をとっていると、友人は心を閉ざし、親戚は同情すらしてくれなくなる。

これに反し、礼譲を保ち、温容をもって接すれば、仇敵の心をも開かせ、至るところで温かく迎えられるはずである。

ここで注意すべきは、礼儀作法を重んずれば、ややもすると高く気取るように見られてしまうことである。そのため、礼儀はどこまでも一般的で民衆的でなければならない。

勤勉、節倹、忠実、雅量の品性を有する人は、個人的にも社交的にも必ず成功するであろう。資金がなければ何にもできない、成功もできないなどと弱音を吐く人は、意気地がないのである。

10.一度も仕事で「遅れ」を出したことがない“段取り”術

私は、乗り物で移動中、仕事のないときはいつも寝溜めをする。時間が長いの、スピードがのろいのと、イライラすることもない。

帰宅した夜には、留守中に溜まっていた仕事を必ずその夜のうちに方づけてしまう。長い旅行の後など、ときどき家人から「今晩は遅くなったから明日になさっては」と言われることがあるが、汽車の中で十分に寝溜めしてあるから、必ずその晩のうちにできるだけのことをやる。

仕事が多いときは、急ぎのものから先にやるのはもちろんだが、その次には嫌なこと、難しいことを先にして、好きなこと、簡単なことは後にすることにしてきた。

このやり方は「むしりやすい草からむしっていけ」という、二宮尊徳翁の教訓に背くようだが、尊徳翁の教えは全体としてものを見た場合のやり方で、私が言うのは部分としてものを見た場合の処理法である。

2012年3月27日火曜日

日本一の幸福者、本多静六の人生の秘訣(5)

昨日からの続きです。

7.知識を“雪だるま”式に増やす法

一度決めた自分の仕事を生涯つづけていると、その仕事に取り込んでいる間に、専門以外のことや本業以来のことを知る機会が出てくるものである。そうしたときは、その好機を逸することなく、できるだけ多くのことを見聞し、調査し、要点を覚えておくことが成功するためには必要である。

あらゆる機会を利用して、大ざっぱであっても、各種の事業を調べておくと、重宝がられて、いろいろなことを頼まれる。その場合には、ある程度までの計画を立て、それ以上の細かな設計や実行は、それぞれの専門の人に任せるようにすればよい。こうすることで、人脈は広がり、信頼は高まり、事業の可能性も広がっていく。

いかなる事業に従事するとも、本業を妨げない限りは、あらゆる機会を逃がさす、それに関心を持ち、調査し、機を見て猛進し、幸運を捕らえることが成功には肝要である。

8.「待ち」は決して「消極策」ではない

いかによく従来の方法を実行しても、時勢や人の都合で急に思うようにならないこともある。こうした場合には、時節を待たなければならない。

西洋には、

「時は最良の解決者なり」

「待つことのできる人に、時はいっさいの宝物を持ってくる」

「待つことを知るは成功者の大秘訣だ」

といった諺がある。

ちょっと鼻をつままれてもわからないほどの暗闇の中でも、心を落ち着けてしばらくジッとしていると、あたりが見えるようになってくる。そして、自分の進むべき道がわかって、目的地に向かってどんどん進むことができるようになる。それと同じで、どんな暗黒の中にも、どんな苦難の中にも、必ず進むべき光明の道が横たわっているものである。

大なる成功は、大なる苦難を通して初めて得られると知ることができれば、いかなる難事にも忍耐できるはずである。

実際、どんな不景気も不幸も、決してそのまま永久に続くことはない。時節が来れば、必ず反対の動きを見せるものである。

逆境のとき、思うようにならないときには、いたずらに動くことなく、しばらく時節を待つのがよい。そして、その間に修養工夫して、知識を養い、実力を蓄えるのだ。その後、風雲に際会したときには、ただちに猛然とこれに乗じるのである。