2013年6月22日土曜日

野中広務の領土問題棚上げ発言

  野中広務元官房長官が、中国共産党幹部との会談で、1972年の日中国交正常化交渉の際、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相との間で、沖縄県・尖閣諸島について「領土問題棚上げで合意していた」と発言して問題になっています。なぜ、今頃、こういうひとがこういうことを言うのか、神経を疑います。

日本政府は完全否定しましたが、事実はどうなのでしょうか。

NHK政治部記者で園田直元外相の政務秘書官を務めた渡部亮次郎氏(77)が、6月7日の夕刊フジに緊急寄稿しています。

日中国交正常化の際は、NHK記者として田中訪中に同行し、日中平和友好条約締結の際は、園田外相の政務秘書官として立ち会った。

田中角栄―周恩来会談に同席した二階堂進官房長官からは『尖閣棚上げ』については一切発表はなかった。後日、田中氏が親しい記者を通じて発表した後日談にも「棚上げ」のくだりはない。

 その後、私は外相秘書官となり、当時の関係者に聴取したところ、事実は以下のようだった。
 
 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本領土だが、中国は東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された70年代以降に領有権の主張をし始めた。このため、田中氏から『中国の尖閣諸島に対する態度をうかがいたい』と切り出すと、周氏はさえぎるように『今、この問題には触れたくない』といい、田中氏も追及しなかった。私も同席した78年の日中平和友好条約の締結交渉では、当時の園田外相は福田赳夫首相の指示に基づき、『この際、大事な問題がある』と、最高実力者だった鄧小平副首相に迫った。すると、鄧氏は『あの島のことだろう。将来の世代がいい知恵を出すだろう』と話し合いを拒否した。

中国側はこうした経緯に基づき『棚上げ』を既成事実化しようとしているが、説明したとおり『棚上げで合意』などありえない。中国が勝手に先送りしただけである、私自身が生き証人である。野中氏はこれを中国側の都合のいいように誤解し、結果的に中国側に加担している。

日本政府が『日中間に領土問題は存在しない』という限り、中国は尖閣領有の手掛かりを国際的に失うが、日本に『棚上げ』を認めさせれば『手掛かり』を得るわけだ。

こう考えれば、今回の野中発言は売国的というしかない。

と、歴史の証人は、筋が通っています。

渡辺亮次郎
1936年、秋田県潟上市生まれ。法政大学卒業後、59年にNHK入局。政治部記者として、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、三木武夫、福田赳夫の各内閣を取材する。77年、園田直外相の政務秘書官に抜擢され、日中平和友好条約締結に立ち会う。現在、政治、国際問題などの評論で活躍する。

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