2013年4月12日金曜日

歳のせいで物忘れがひどいという誤解(2)~池谷裕二

 
今から11年くらい前に、一部の脳部位は大人になっても成長を続けることが発見されました。それが前頭葉と、基底核です。


5年程前にオランダ人の女性が115歳で亡くなり、その脳を解剖して調査してみると、神経細胞の数、シナプス(神経細胞のつなぎ目)の数、タンパク質の量、遺伝子の状態など、脳の機能が若い人とほとんど変わらないことがわかったといいます。

もともと脳自体は40歳以降のほうがむしろ働きが活発になるといわれているですが、120歳でも現役だということは、半分の60、つまり還暦はまだ、“脳人生”は半ばということになります。

 「脳が衰えた」というとき、身体の衰えを脳の衰えと思い込んでいる場合が多いのではないでしょうか。身体の衰えのほうが脳の衰えよりも早いので、おそらくそれが反映されているのではないかと池谷氏は言います。「若い頃は、3、4時間ずっと本を読んでいたのに、最近は30分くらいで集中力が落ちちゃって。歳とったなあ、脳が衰えたかなあ」といったりしますが、これは身体の衰えだと考えたほうが正直です。なかなか認めにくいところですが。
 歳をとったから物忘れがひどい、というのも誤解だと思いますと池谷氏は言います。物忘れやど忘れが増えたと思ってしまう理由の一つは、子供の頃に比べて大人はたくさんの知識を頭の中に詰めているからです。そのたくさんの要素の中から思い出すのに時間がかかるからなのです。

 半年くらい前のことでも、つい最近といってしまうこともありますが、その半年の間に、新たにたくさんのことを頭に入れているので、思い出すのに時間がかかってしまうのです。それは仕方のないことなのに、「つい最近のことが思い出せない」と、必要以上に気にしてしまうパターンが多いのです。言われてみればそうかも分りません。

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