2012年5月4日金曜日

佐高信の「原発文化人50人斬り」(13)

「東電中興の祖といわれる木川田一隆さんは、企業の政治献金が問題となり、電力料金の不払い運動が始まった時、自民党はもちろん財界から非難を浴びながら、企業としての政治献金をやめました。
そしてキッパリ、『自民党が潰れても、東京電力を潰すわけにはいきません』
木川田さんは勲章も拒否した骨のある経営者でした。
木川田さんの師が『電力の鬼』といわれた松永安左エ門さんで、松永さんは戦時中に電力の国家管理に反対し、『官僚は人間のクズである』と言い放ちました。そして、『官僚、官僚とののしるが、官僚という別の人種がいるのではないんだ。人間が権利を持ったときに示す自己保存、権力の誇示の本能の表現、それが官僚意識というもんだ』と喝破したのです。

2002918日付の『朝日新聞』経済面の『東電ショック』という記事は東電が原発のトラブルを隠していて告発されたことに触れ、技術評論家の桜井淳さんのこんな指摘を載せています。
『今回の告発は、外資系のゼネラル・エレクトリック・インターナションナル社だからこそ出来た。国内メーカーではあり得ない。国内メーカーから告発者が出たら、電力会社は入れ札などでしっぺ返しする。東電の不正を知ったとしても、メーカーはいつも黙って耐え忍ぶ。それがルールだ』
『沈黙する国内メーカー』で、日立製作所、東芝、三菱重工が国内の原発メーカーですが、この3社にとって東電以下の電力会社は逆らうことのできない“殿様”のような存在である、と続きます。東京電力は、この首都圏で世界最高水準の電力を休むことなくお届けしています』

『エネルギーの力で、ゆたかで快適な環境づくりに貢献することが東京電力の仕事です』も、避難させられた福島原発近くの住民にとっては腹立たしい限りだろう。
『社会の信頼を大切にする』『未来を切り拓く』『人と技術が活きる』が三つの経営指針だというのも、ブラックジョークにしか聞こえない。
同社の求める人材の項には、社会的使命(安全供給)を支える『頼りがいのある人材』」とある。とすれば、社長の清水正孝は最も『頼りがいのある人材』であるはずだが、はたしてそうか?

その虚像の膨張にメディアは積極的に手を貸してきたが、もう一つ忘れてならないのが労働組合の腐敗である。
関西電力の労組だけれども、1991年に関電の美浜原発で事故が起こった時、原発推進という立場で会社と共同歩調をとってきた関電労組の当時の委員長は『原子力は地球にやさしいエネルギー源として必要』『今回の事故は今後の原発を左右する取り返しのつかないものではない。設備的にも人為的にも原子炉が完全に停止したのだから問題はない』と理解を示し、反発運動について『原発を推進していくことが犯罪であるかのように直接行動に出ることは民主主義のルールに反する』と批判したのである。

電力会社が原発を国策とする政府と一体となっていることは、前福島県知事の佐藤栄佐久の強引な逮捕で明らかである。端的に言って、佐藤は事故を頻発させる東京電力に『待った』をかけたために“国策逮捕”された。
自民党の参議院議員だった佐藤は決して原発反対派ではなかった。
しかし、福島県知事になってまもなく、『原発をめぐる戦い』を始めることになる」

0 件のコメント: