2010年11月30日火曜日

1ドル50円時代

 急激な円高は一服していますが、安心するのはまだ早い。「1ドル=50円まで進む可能性がある」と警告するのは同志社大大学院の浜矩子教授(58)です。テレビにもよく出ている人です。国際的な決済に使われる「基軸通貨」としてのドルの役割が終焉するのはさけられず、9月に実施した日本の為替介入は、「ヤブ医者の処方せんで副作用も大きい」と批判しています。

 このところの円安ドル高の動きについて、「ドル高が修正される歴史的な流れのなかで一つの踊り場にすぎない」と指摘しています。中長期的には、円高ドル安の流れは止められないとみています。

 戦後の為替相場は、1ドル=360円の固定レートでスタートしました。1971年8月にニクソン米大統領が金とドルの交換停止を宣言した「ニクソン・ショック」があって、ドルが切り下げられ、1ドル=308円になりました。その後、1973年の変動相場制移行後はさらに円高が進み、95年4月19日には、戦後最高値の1ドル=79円にもなりました。「ニクソン・ショック」以後、ドルは実質的に基軸通貨としての力を失っていたにもかかわらず、各政府が外貨準備などで保有しているドルの価値が減少するのを恐れたこともあって、“裸の王様”であり続けました。

 とどめとなったのが、2008年9月のリーマン・ショックです。08年10月以後、1ドル=90円~100円を推移していたが、今年7月に85円、8月に83円、9月に82円台と円高が加速。そして、11月に80円20銭まで上昇しました。

 民間も政府も借金をしないと経済が回せないのが米国経済です。その結果が経常収支と財政収支の『双子の赤字』になっています。今後肥大化してメタボ状態の米国経済の規模が半分程度となり、1ドル=90円~100円で推移してきた為替も半分の45~50円になるのは避けられない。

 一方、ドル売りの受け皿として買われているのが、日本の円です。しかし、日本の輸出産業にとっては収益を目減りさせるほか、内需産業も割安な輸入品に押されています。

 政府・日銀は9月15日、過去最大規模となる2兆1249億円の円売りドル買い介入を実施したが、浜教授は「歴史的なドル安の流れに日本だけが逆らっても徒労でしかない。まるでヤブヤブ医者の処方せんだ」とバッサリ切り捨てています。浜氏は、多少極端な発言が多いので、多少は割り引かねばなりませんが、正鵠を得ています。

 さらに浜氏は、介入は効き目がないだけではなく、副作用があるといっています。「介入は麻薬のようなもので、一度使うとやめられず、2兆円の次は4兆円といった具合に量も増えて行く。さらに、深刻なのは、介入で日本政府がため込んだドルが、今後ドル安が進めば大きな含み損を抱えることになる」。

 「あす50円になるなら大変打撃になるが、まだ数年の時間はあるだろう。その間に、企業側の新たな生産・輸出体制や政府の新たな通貨体制構築など、手を打つことは可能だ。そもそも1ドル=50円になってドルが基軸通貨の座を失ったら決済に使われなくなるので、レートを気にしなくてもよくなる」とも語っていますが、取引決済にどの通貨を使うか、まさか物々交換というわけには、いかないでしょう。

 ドルに代わる基軸通貨はあるのでしょうか。浜氏は、「基軸通貨は一国が突出して強い場合に成り立つので、ユーロも人民元も無理だろう。複数の決済通貨が共存する“通貨無極化時代”が到来するのではないか」と予言しています。たしかに一国の通貨でお金を貯めていると大変なことになります。今、現実的に一番強いのは、人民元でしょう。割り切って、人民元で決済しますか。それにしても、アメリカの経済は、どうしようもないようですが、国際警察力については、アメリカに頼らざるを得ません。世界の経済についても、もう一度、アメリカは世界の手本になってほしいものです。ただし、ユダヤの商法はやめて、実体経済にあったものにしてほしいと思います。

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