2010年6月15日火曜日

読書術(8)

 轡田隆史氏の『1000冊読む!読書術』の8話目です。
「換骨奪胎」とは、詩文を作るとき、古人の作品の、趣意は変えずに語句だけを変えて自分のものとして表現することと、あります。

 有名な「換骨奪胎」の例として、松尾芭蕉の句があります。
  夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡
 これは唐の大詩人、杜甫の作品である「春望」の、
  国破レテ山河在リ、城春ニシテ草木深シ
の、「換骨奪胎」です。趣意は借りながら、完全に芭蕉の精神による、芭蕉の作品に生まれかわっています。芭蕉は、杜甫を読み、杜甫をまねして自分の作品を創りだしたのです。みごとな「換骨奪胎」です。ですから、わたしたちも、芭蕉のまねをして、大いに「換骨奪胎」をすればいいのです。

 詩を読むことによって、わたしたちは、ことばという貴重な存在がひそめている、深い意味も美しさも学ぶことができるといいます。ことばを選んで組み合わせる作業とは、つまり「考える力」による作業なのです。
 「詩的ことば」とか「美しいことば」というものはありません。ごく平凡なことばが、組み合わせによって「美」に変貌するのです。松尾芭蕉の名句、「古池や蛙飛び込む水のおと」だって、分解すれば、ことばの一つひとつはごく平凡なものばかりです。

 「社交の時代」こそ、「ことばの時代」なのです。ことばを磨かなければ、生きて行けません。この国の政治の、どうしようもない混迷は、すなわち「ことばの混迷」なのですとまで書いています。
そして、ことばを磨く絶好の舞台が「詩」です。

 話は変わりますが、「どうして、このように日本で漫画文化が発達したのでしょうか」「それは、手塚治虫が日本で生まれたからです」と作家、夢枕獏氏が書いていました。また、内田樹『街場の教育論』ミシマ社は、日本語は、漢字・カタカナ・平仮名をそれぞれに脳が対応するという、不思議な言葉であるために日本独特の「マンガ」表現を生んだという説は興味深いものです。

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