2012年9月2日日曜日

原田泰氏の震災復興欺瞞の構図(2)


「内閣府は、2011323日に、東日本大震災における物的資産の毀損額を、仮の数字として16兆円から25兆円と発表した。仮の数字であって、単に岩手、宮城、福島の東北3県の物的資産が、阪神淡路大地震の毀損率15%と同程度かその2倍の率で破壊されたとして計算しただけである。
さらに、内閣府は毀損された物的資産は約16.9兆円と推計し直したが(2011624)、破壊された資産の大雑把な分類があるだけで、詳細な根拠は何にもない。この金額から出発して、19兆円から23兆円の復興予算が必要で、そのために11兆円以上の増税が必要だという議論になっているのだが、そもそも16.9兆円も壊れているはずがない。

被害の大きかった福島、宮城、岩手でも、内陸部に入れば被害は限られている。この3県の人口は571万人であるが、津波による浸水地域の人口は51万人である(総務省統計局調査)。この中には、床下浸水地域の人口も含まれている。震災で避難された方は、ピークで約40万人である。すると、自宅に住めないような深刻な被害に遭われた方はぜいぜい50万人程度だろう。

一方、日本全体の工場や住宅、道路や橋や港などの物的資産(建設物だけで土地は含まない)の額は1237兆円である(内閣府「国民経済計算」民間・公的別の資産・負債残高、2009年末)。日本の人口は12806万人なので、1人あたり966万円の資産を持っていることになる。
東北の3県で破壊された物的資産は、966万円に50万人を掛けた4.8兆円程度ではないだろうか。
これを少し多めにして6兆円としよう。日本全体の物的資産のうち、民間の資産と公共の資産の比は21なので、東北でもこの比は同じとすると、破壊された民間資産は4兆円、公的資産は2兆円ということになる。
民間資産のすべてを政府の負担で復旧するのは、不公平ということになるだろう。政府が半分援助するとすれば、2兆円で済む。すなわち、合わせて4兆円が必要な復興費用ではないだろうか。
これに対して、1237兆円という数字は減価償却を考慮したものである。
そもそも、そんなに壊れていないことは、宮城県を除く被災地の自治体も認めている。
宮城県は住宅被害を33508億円であるとしているが、仙台市の住宅(宅地も含まれている)被害は5528億円に過ぎない。全壊・半壊の住宅は、宮城県は97648戸であるのに対して、仙台市は123126戸である。全半壊の住宅は、宮城県が仙台市より2割少ないのに、被害額は宮城県が仙台市の6.1倍となっている(*仙台市は政令都市ですので、宮城県の集計からは、抜けています)。

宮城県の全半壊の住宅97468戸に対して建物被害が33508億円ということは一戸3432万円の被害となる。中古住宅の建物だけの価格が一戸当たり3432万円とは、あり得ない推定値である。
宮城県によれば、水産業関連被害額が6853億円(仙台市を含む宮城県の数字)と、漁民の数字がほぼ同じの岩手県3587億円の1.9倍である。

深刻な被害に遭われた方は50万人である。震災復興が最終的に総額23兆円だとすると、被災者一人当たり4600万円の復興費をかけることになる。一方、前述のように、日本人一人あたり966万円の物的資産しか持っていない。なんで一人4600万円もかけるのか」
まさに正論です。そう思いませんか。

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