「わたしがその先のマーケットに野菜と果物の買物に行きましたが、その間です」
「ご主人は、おいくつですか」
「61歳です」
「あなたが買い物に行かれるとき、玄関の錠をかけましたか」
「錠はかけませんでした。主人もいましたし、すぐに帰るつもりでしたから」
「すると、犯人は施錠のしていない玄関から入って二階へ上がり、ご主人を絞殺したと思われます」
「奥さんは帰宅してすぐに二階へ上がりましたか」
「はい」
「ご主人に近づいてその顔を上から見ましたか」
「え?どういう意味ですか」
「ご主人は両眼を開けていた。その顔をあなたは上から真正面に見ましたか、と言っているのです」
「死んでいるかどうかわかりませんから、顔に声をかけ、体を揺さぶりました」
「前にどなたかこの家に同居されていたのですか」
「はい。一年半前までは二階に息子の安夫夫婦がおりましたが、千葉支店に転勤になって、市川市におります」
「山岸安夫さんですか。安夫さんは何年前に結婚されたのですか」
「二年前です。安夫さんは今年32歳のはずです。わたしは、重治とは10年前に一緒になりました。奥様が亡くなられたからです」
「失礼ですが、あなたの年齢は?」
「39歳です」
重治とは、22の違いである。
そこに捜査員が栗色のかわいい子犬を抱いてきた。
「階段下の裏にうずくまっていました」
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