2014年5月7日水曜日

どうせ死ぬならがんがいい(9)

 診断基準の問題

 胃がんの診断基準は、日本と欧米では違うそうです。欧米ならがんとは診断しない異型上皮(上皮の病変)に、日本では「がん」と名前をつけて手術したりしています。そういう異型上皮は近藤氏は「がんもどき」にも入れていません。

 日本でポリーブガンと呼ばれている腫瘍は、欧米では「がん」ではなく、「良性腫瘍」と診断されます。

 がんについてはっきり分っているのは、遺伝子の傷が、がんを引き起こすということです。放射線、紫外線、たばこの煙に含まれる物質、ウイルスなど生体を攻撃する物質がいろいろあり、体の中に入って細胞の中のDNAの鎖をちょん切ったりします。そうやって遺伝子に傷がつくと、細胞が果てしなく分裂を続け、がんになると言います。

 いまの医学で「早期がん」として発見できるのは、直径1センチ前後からで、実は、これはがんの一生の中では細胞がおよそ30回も分裂を繰り返したあとの「晩期」の段階なんです。がん細胞は非常に小さくて、1つの細胞が大体1ミリの100分の1くらいの大きさです。1センチのがんを見つけると「早期発見」と言われますが、直径1センチに育ったがんの中には、10億からの細胞が含まれます。最近、分子生物学の研究が進んで「がん細胞には、できるとすぐ転移する能力がある」ということが明らかになっています。「がんは大きくなってから転移する」という説は間違いだということがはっきりしてきたわけです。つまり、本物のがんは、早い段階で多数の臓器に転移しています。だから、検診で見つかってから標準治療(外科手術、放射線、抗がん剤)をしても治りません。あちこちに転移したがんを治した、という正式な報告は実は一例もない。結局がんは、ほかの臓器への転移があるかないか、がんができた場所で運命が決まってしまうと言います。

 昭和天皇や、アップルの創始者のスティーブ・ジョブズ氏の命を奪った膵臓がん。これは本物のがんが非常に多い。

 肺がんも一般的に「助からないがん」というイメージが大きい。肺がんは、咳や痰などの症状があって見つかるのは本物のがんが多い。反対に症状がなく検診で見つかった肺がんは。十中八九がんもどきです。

 「痛い、苦しい」など、日常生活で不便を感じる症状がなく、検査や人間ドックで見つかるのはほとんど、がんもどきです。

 固形がんは治療をあせらず様子を見るのが賢明。そもそも「早期発見・早期治療」というのは、完治の可能性がある感染症の結核で成功した手法ですから、がんに対して「早期発見・早期治療」という言葉を使うと、早く見つければ完治する、という誤解を与えてしまいます。

 がんは傷口に集まって増殖します。腹膜の方にまでがんが及んでいると、切ったところにがん細胞が集まって、そこで増殖するから、かえってがんの進行・再発を助けることになってしまいます。傷のついていない腹膜は、つるつるしていますから、がん細胞はとっかかりがないから入り込めない。傷がついてギザギザしたところにスッと入り込んで増殖する。メスが入って正常組織のバリアーが崩れたところにがんがはびこってしまいます。
 肺、胃、大腸、子宮などのがんでは、早期がんでも手術されると合併症・後遺症が非常に大きく、死亡することもあります。    

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