2012年4月14日土曜日

消費税増税に大義も効果もなし

 210日の産経新聞の正論に竹中平蔵氏が投稿していました。わたしは、竹中氏は、けっして好きではありませんが、経済については、なかなか一家言あることを認めています。

ここで、竹中氏は、

「議論されている消費税増税の目的は『財政再建』と『社会保障の充実』。しかし、結論から言うと、政府・与党の増税案は、財政再建も社会保障の充実もない、大義なきあしき増税である。

 最初の1%分で、消費税増税による政府全体のコスト増を賄う。次の1%は人口高齢化で増加するコストだ。別の1%は社会保障の機能維持(実質的には財政赤字削減)のため、別の1%は年金国庫負担を2分の1にするためで、社会保障の充実に回るのは最後の1%だ」

 問題はその中身で、基本的には多くが低所得者対策で、中間所得層への恩恵はほとんどない。増税は社会保障充実ではなく、矛盾に満ちた現行制度の維持のためだけのもの、といわざるを得ないといっています。

そもそも、なぜ5%かという命題に対して、竹中氏は、

「第一は、年金・医療・介護など社会保障の主要3経費と消費税収入を比べると、15年までに約13兆円(消費税5%)の歳入不足が見込まれるという点だ。なぜ3経費と消費税収入を比べるか意味不明、計算の根拠もおかしい」といっています。

「消費税の収入は今後5年間名目成長率を約1%として計算している。名目3%成長を目指す政府方針と相容れない。3%成長を前提とすれば、税収は一気に拡大して増税の根拠は揺らいでくる」

これは、まさに竹中氏のいうとおりで、一方で3%といいながら、一方で1%という。都合のいい理論である。こういったことを野田首相、安住財務大臣は分かっているのだろうか。どうも財務官僚の出てくる数字をそのまま信用しているように思います。しかも、何の疑念ももたずに。

さらに、竹中氏は、

「米国は名目成長率3.5% 、英国は5.3%が前提だ。1%成長はデフレ克服に政府自らが失敗するという前提でしかいない。

第二はマクロの財政再建に関る。内閣府は、増税で15年の基礎的財政赤字を現状の約半分にできると試算する。その先はどうなるのか。試算では、20年までにさらに7%の消費税増税をしなければ基礎的赤字をゼロにできない。社会保障が良くならず、消費税だけが17%とドイツ並みになる」

これは、恐ろしいことです。

「数年前まで82兆円規模だった一般会計歳出は、今年度95兆円まで膨らんだ。GDP(国内総生産)が横ばい状態の間に、財政規模は子供手当てなどで2割肥大した。消費税5%アップで見込まれる13兆円の増収はバラまきの後始末に使われるにすぎない。増収の前にまず歳出の正常化が必要だろう。

何によりも、金融政策を変えてデフレを克服することだ。そうして名目成長率を通常の34%に戻せば、5年後の税収は10兆円規模で増え、消費税増税は不要になる。

社会保障は高齢者にはすでにそれなりに行われている。だが、出産・子育て休暇支援、女性の再就職支援など若い世帯向けが圧倒的に見劣りする。これを拡充し世代間の不公平をなくすことを優先して目指すべき。

次世代へのツケを避ける――。増税の名分の一つだ。しかし、高消費税率こそ、次世代への負担になる。真のツケ回し回避策は、増税しなくてもやっていける社会をつくり次世代に引き継ぐことだ。

われわれは低福祉・重税国家の階に立つ。誤った増税で、日本を『失われたX年』から『暗黒のX 年』に追い込んではならない」

と、言っていることは、まとを得ています。民主党は、竹中氏を嫌いなようですが、コンサルの中にいれておく人物でしょう。榊原英資とともに。二人を戦わせると面白いと思います。

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